賃貸オフィスの修繕義務とは?
賃貸オフィスの賃貸人、すなわち貸し手人は、賃借人が建物を利用することで収益を得られるよう、建物を修繕する義務を負っていて、これを修繕義務と呼んでいます。もちろん、ありとあらゆる破損や瑕疵を賃貸人が修繕しなくてはならないということになると、賃貸人はたいへんな負担を背負うことになります。他方、賃貸人の修繕義務の範囲を限定すると、反対に賃借人、すなわち借り手の負担が大きくなります。多様な解釈が可能であるため、オフィス賃貸契約において、トラブルになりやすい点です。あとで面倒を起こさないためにも、契約する時点で、賃貸人・賃借人の間で、修繕義務の適用範囲をきっちり明確化しておかなくてはなりません。
破損が不可抗力によるものの場合は?
不動産物件においては、賃貸人・賃借人には過失のない、不可抗力が原因で起こってしまう破損があります。地震や台風などの自然災害がそれですが、この場合、修繕義務は賃貸人に適用されます。しかしこれは強行規定ではありません。契約内容によっては、小さな修繕は全て賃借人が負担することになっている場合もあるなど、借主保護が前提ではなく、当事者間の特約で排除が可能です。これを「修繕特約」といいます。ただし、特約によって賃貸人の義務がないとされている場合でも、すべての破損に関して賃借人が修繕しなくてはならないというわけではありません。屋根の葺き替えなどの大規模な修繕や、通常の利用によって生じる破損の範囲をこえるような部分の修繕は賃貸人の義務であるとする判例も多く出されています。あとでトラブルにならないよう、賃貸人・賃借人との間でよく話し合っておく必要があるでしょう。
第三者が損傷を加えた場合は?
また、天災ではなく第三者によって破損が生じる場合もあります。第三者による破損が故意のものであるとき、賃借人に修繕義務はありません。破損させた第三者に対して賃貸人が損害賠償を起こすのが一般的で、修繕費用も第三者が負担します。破損が故意でなかった場合も、当然のことながら、賃借人の責任となることはなく、賃貸人が修繕費用を負担することになります。