前回、前々回のコラムでご自宅を売却して儲けが出た際の特例につきご説明しました。
しかし、当然、常に高く売れるわけでは無く、売却に伴い損失が出てしまうこともあるでしょう。
今回はご自宅を売却して損失が出てしまった場合の税務上の救済措置についてご紹介したいと思います。
<3>マイホームの売却損失に係る損益通算
ご自宅を売却して損失が出た場合、下記2つのパターンに合致した場合には、損失の金額(の一部)を他の所得(給与所得、事業所得など)と通算することができます。
つまり、その譲渡損失を給与収入の利益等とぶつけて、その分節税ができるということになります。
その2つのパターンとは、下記の通りです。
①マイホームに係る売却損失があり、新しい家を買うために住宅ローンを組んでいる場合
②マイホームに係る売却損失があり、売却収入で元の家のローンを払いきれない場合
【①マイホームに係る売却損失があり、新しい家を買うために住宅ローンを組んでいる場合】
この場合には、売却に伴う損失が生じていることと、新しい家のローン負担とで大変だろう、ということで、その損失の金額を他の所得と通算することができます。
損失の金額が大きく、他の所得から引いても引ききれない場合には、その引ききれなかった損失については翌年以後3年間繰り越して、控除をすることができます。
【②マイホームに係る売却損失があり、売却収入で元の家のローンを払いきれない場合】
この場合には、売却に伴う損失が生じており、更に前の家のローンが払いきれず残ってしまっているので大変だろう、ということで同様に他の所得と通算することができます。また、①と同様、控除しきれない金額については翌年以後に繰り越すことができます。
引ける金額は、損失の金額全額では無く、ローンが残ってしまった金額が限度となります。
(例)
・5,000万で購入した家を3,000万で売却した
・売却時の、元の家のローン残高は4,000万円
→譲渡所得は3,000万円―5,000万円=▲2,000万円
ローンの残債は、4,000万円―3,000万円=1,000万円
∴譲渡損失2,000万円のうち、1,000万円を損益通算、繰越控除することができる
出来れば高く売って利益を得たいところですが、何らかの事情で、損失が出る売却をせざるを得なくなった場合には、せめて税金の優遇を受けるため、この損益通算・繰越控除の規程をうまく活用できると良いですね。
それぞれ、細かな適用要件はありますので、ご自宅売却時には、利益が出ても、損失が出ても、何か税務上の特例が使えないかチェックしてみることとをお勧めいたします。