相続対策、というと、一般的には、なるべく税金を安くするための、「節税」が取り上げられますが、「納税資金の確保」ということも頭に入れておく必要があります。
相続税は原則として現金一括納付です。
相続税は最大で55%という高い税率になりますが、当然ながら持っている財産以上に税金を取られることはありません。
そのため、相続財産に現金が多い場合には、もらったお金から税金を払えば良いのですから、納税で困ることはありません。
しかし、地主の方で、不動産をたくさん所有されているような方の場合、納税資金をどう捻出するかにつき頭を悩まされることになります。
土地が10億円分あっても、納税を5億円現金で払いなさい、と言われてしまうと困ってしまうわけです。
どうしても現金が無くて納税できない場合には、「延納」、「物納」という方法を選択することが出来ます。
「延納」は、最長20年かけて、分割払いにより納税していく方法です。
すぐにまとまったお金が準備できなくても、定期収入があり、少しずつ払っていけるような場合には延納を検討されると良いでしょう。
分割払いでも払いきれない、という場合には「物納」を選択することになります。
物納は相続でもらった「物」そのもので現物払いをする方法です。
物納するためには、土地であればきちんと測量をし、隣地との境界確認が取れているなど、様々な条件整備が必要となります。
測量するためには当然お金もかかりますので、納税するためのお金が無いから物納したいのに、物納するためにもお金がかかる、ということになりかねません。
そのため、明らかに納税資金が足りなさそうな場合には、将来物納することも視野に入れて、事前に測量をするなど準備をしておいた方が良いでしょう。
また、物納をするのでは無く、土地を売却して納税資金を準備することも検討できます。
売却した場合には、そのもうけに対し、今度は所得税・住民税が課税されるため、より税負担が重く感じられるかもしれませんが、物納の場合には、「相続税評価額」で納付したことにされるのに対し、一般的に相続税評価額よりも売買時価の方が高くなることが多いため、高く売れる場合には所得税等を払ってでも、物納より特になるケースもあります。
(例)
払うべき相続税額:1億円 、 相続したA土地の価値(相続税評価額1億円、売買時価1億5,000万円)
① 物納した場合 1億円分の納税に充当できる。
② 売却した場合 1億5,000万円-所得税等3,000万円(簡便的に20%と仮定)=1億2,000万円
1億円納税しても2,000万円残る。
その不動産が売却した方が良いか、物納に充てた方が良いかは個別の判断になり、一概には言えません。
納税について心配な場合には、まずは一度、相続税の試算をし、ご自身の財産の一覧表を作成してみましょう。
納税資金が足りない場合には、お持ちの資産の中で、売却した方が良いのか、物納した方が良いのか、事前に区分けをしておくことをお勧めいたします。