不動産の所有権はどのように証明されるか
不動産などの物には物権と呼ばれる権利が帰属しています。物権とはおもに所有権・地上権などから成り、もって物を支配し、使用収益することのできる権利と考えられています。この物権は金銭などのやり取りを経て、保有者が変更されたり、権利自体が消滅したりすることがあります。これを物権変動と言います。この物権変動によって不動産の所有権が変更されること、これを俗に不動産売買と称する訳です。しかし、物権は目に見えるものではありません。そこで所有権などの物権を公的に証明できる制度が求められることになります。でなければ、高額を支払って購入した不動産の所有権を第三者に主張されるなどして、健全な社会を維持することができません。こういったことから作り出された制度が登記というものです。
登記とは、国が作成する登記簿に物件変動の事実及びその内容を記載すること、または記載された内容自体のことを言います。この登記については、不動産登記法などによって手続きが定められており、登記できる物権としては所有権・地上権・地役権・質権・抵当権などがあります。また、物権以外にも登記できる権利があり、具体的には賃借権や買戻し権がこれに当たります。所有権など物権の登記を正しく行うことで、国が権利の保有者を守ってくれることになります。
所有権の移転=売買時の登記の意義
不動産の売却は法的に言えば「金銭を対価とした所有権の譲渡」です。つまり、不動産売買においては所有権が移転した旨、改めて登記する必要があります。これが為されなければ、不動産の購入者(新たな所有権者)は第三者に対して所有権を主張できません。これを民法177条では”第三者に対抗できない”と称しています。この”第三者に対抗できない”の意味を分かりやすく説明するなら、例えば不動産の売却者が同一の不動産を二者に並行して売却した場合において、仮に先行して契約・引き渡しをしたAがあったとしても、Aが所有権者になった旨の登記がされていない場合には後から契約・引き渡し・登記したBに対して不動産の所有権を主張できないということです(ただし、Bが先行して購入したAのことを知っていた場合はこの限りではない)。こういったことから、不動産の購入者にとって登記は欠かせない作業であり、それ故に売却者も登記に積極的に協力することが求められます。もし登記関係の不備が売主側にあれば、それは買主の信用を大きく損なうことになりかねませんので、万全の準備を行うようにしましょう。