新法施行から2年が経過!令和元年度「観光白書」と観光産業の回復に向けて②
カピバラ好き行政書士 石井くるみさんが民泊を始めとした宿泊関連ビジネスの最新情報を紹介します。新しい観光のあり方について考えるために、観光白書を紹介します。(リビンマガジンBiz編集部)
令和2年6月15日で、住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行されて2年が経過しました。6月16日に閣議決定された「観光白書」からは、急速に増加するインバウンド(訪日外国人旅行客)と、順調に成長する国内旅行の恩恵を受けて、空前の好景気に沸く2019年の日本の観光産業の状況が報告されています。
しかし、新型コロナウイルス感染拡大による入国制限等により、この状況は一転します。本日は、わずか半年で状況が大きく変化した世界の観光動向、訪日外国人旅行者数、日本人の海外及び国内旅行の動向等を分析するとともに、コロナウイルス感染の収束後の回復に向けた観光施策について解説します。
新型コロナウイルス感染症拡大防止による入国制限を受けて、2020年4月の訪日外国人旅行者数は99.9%減の2,900人となりました。国内においても旅行のキャンセル、予約控えや外出自粛の影響を受け、観光需要は大きく減少し、2020年3月の日本人国内旅行消費額は、前年同月比53.1%減の7,864億円となりました。
【訪日外国人旅行者数の推移】
グラフ=筆者作成
【日本人国内旅行消費額の推移】
(出所:観光庁)
これにより、経済的に大打撃を受けたのは、ホテルや民泊などの宿泊事業者、旅行会社、バス運行会社です。「宿泊予約が70%以上減少した」と回答した宿泊施設は、2月分は2%、3月分は30%程度でしたが、緊急事態宣言の発出された4月以降は90%となり、予約のキャンセルが相次いでいると回答しました。4~5月の大手旅行会社の予約人員は、前年同月比で9割以上の減少で、特に、4月の海外・訪日は取扱ゼロとなりました。貸切バス業界では車両の実働率は5月以降約5%まで減少し、その後も厳しい状況が続いています。
【貸切バス業の実働率の推移】
(出所:観光庁)
幸い日本におけるコロナウイルス感染者の数は爆発的な拡大に至る前に安定したため、緊急事態宣言は5月25日を以って全国的に解除されました。緊急事態宣言解除による感染拡大や、第2波の可能性など予断を許さない状況ですが、私たちは「新しい社会・生活様式」を取り入れつつ、少しずつ日常を取り戻しています。
そこで、観光庁は、「状況が落ち着き次第、国内観光需要を喚起させることが、観光による再びの地方創生に向けた第一歩」と日本人国内旅行の動向と活性化に向けて指針を示しました。全国の旅行業、宿泊業、地域の交通や飲食業、物品販売業など多くの産業に深刻な影響が出ていることを踏まえ、政府は以下の対策を実施する予定です。
①コロナウイルスの感染拡大を防止し、早期に事態を収束させる。
②観光産業に係る事業者の雇用の維持・事業の継続の支援(持続化給費金や雇用調整助成金、融資制度の拡充など)
③状況が落ち着き次第、強力な国内需要の喚起策を実施(「Go To トラベル事業」の実施)
日本における旅行消費額の8割以上は日本人の国内旅行であり、そのうち6割は地方部で消費されています。したがって、海外との出入りが難しい状況において、まずは「マイクロツーリズム」など地方部への国内旅行を推進していくことが有効と考えられます。
6月16日、観光庁は、国内旅行需要喚起策「Go Toトラベル」の事業概要を発表しました。本事業は、旅行・宿泊商品の割引と、旅行先で幅広く使用できる地域共通クーポンの発行によって、新型コロナウイルス感染拡大によって大きな打撃を受けた地域観光の復興を目指すものです。Go Toトラベルを含む「Go Toキャンペーン」は2020年度第1次補正予算で約1兆7000億円が計上されています。
Go Toトラベルでは、国内旅行を対象に宿泊・日帰り旅行代金の1/2相当額を支援。上限は宿泊が1人1泊あたり2万円、日帰り旅行は1万円で、連泊制限や利用回数の制限は設けない予定です。国土交通省は、できれば夏休みの早い段階での事業開始を目指すとしています。
1棟貸しの民泊施設は、ソーシャルディスタンスを確保するには最適な宿泊形態です。
「新しい生活様式」が取り入れられ、働く「場所」について柔軟性が広がる中、働く時間についてもよりフレキシブルになると、旅行時期の渋滞や混雑が緩和されていきますね。
感染症予防対策はしっかりとりつつ、読者の皆様もこの夏は、近場の民泊に宿泊する旅行に出かけてはいかがでしょう?
国・地域ごとの感染収束を見極め、誘客可能となった国等から、インバウンドの回復を図ることで、再び観光を成長軌道に乗せ、観光で日本の津々浦々が活性化する観光立国の実現が期待されます。