新法施行から2年が経過!令和元年度「観光白書」と観光産業の回復に向けて①
カピバラ好き行政書士 石井くるみさんが民泊を始めとした宿泊関連ビジネスの最新情報を紹介します。新しい観光のあり方について考えるために、観光白書を紹介します。(リビンマガジンBiz編集部)
画像=PIXABAY
令和2年6月15日で、住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行されて2年が経過しました。
また、令和2年度の「「令和元年度観光の状況」及び「令和2年度観光施策」(観光白書)」が翌日の6月16日に閣議決定されました。毎年国会に報告される「観光白書」は、最近の観光の動向や観光がもたらす経済効果を幅広い観点から分析し、観光立国の実現に向けて講じようとしている施策を報告しています。本稿では2回にわたり、「観光白書」から、わずか半年で状況が大きく変化した世界の観光動向、訪日外国人旅行者数、日本人の海外及び国内旅行の動向、今後の観光産業の回復に向けたロードマップを解説します。
観光庁によると、令和2年3月31日時点での住宅宿泊仲介業者等(※1)が取り扱う民泊物件数は、延べ129,446件となりました。2年前の住宅宿泊事業法(民泊新法)がスタートした時点から104,508件の増加しています。また、6月11日時点の住宅宿泊事業の届出件数は26,224件で、法施行日時点の約11.9倍となりました。住宅宿泊事業法の施行から2年の総括としては、取扱件数、届出件数ともに増加しており、立法の成果としては順調と言えるでしょう。
しかし、届出件数のうち、事業廃止件数は5,458件で、6月11日時点における届出住宅数は20,766件となっています。届出住宅数は、4月の21,385件をピークとして、5月は21,176件と、2カ月連続で減少に転じており、その減少の原因としては、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響と考えられます。
【住宅宿泊事業(民泊)届出件数の推移】
(出所:観光庁)
令和元年度観光白書からも、これまでの日本と世界の観光の状況をよみとることができます。国連世界観光機関(UNWTO)発表の世界観光動向によると、2019年の国際観光客は14億6,100万人(前年比3.8%増)となっており、世界中で旅行者が増加しています。
地域別にみると、近年、アジア太平洋地域のシェアが増加しており、特に日本にとっては追い風と言える状況です。その証拠に、2018年の「国際観光収入ランキング」において、日本は421億ドルと9位(アジアで2位)で前年の11位(アジアで4位)から上昇しました。
【訪日外国人旅行者数の推移】
2019年の訪日外国人旅行者数は、3,188万人(前年比2.2%増)、訪日外国人旅行消費額は、過去最高の4兆8,135億円(前年比6.5%増)。7年連続で過去最高を更新しました。訪日外国人旅行者数の内訳は、アジアの2,637万人が全体の82.7%を占めています。国籍・地域別に旅行消費額をみると、中国が1兆7,704億円(構成比36.8%)と最も大きく、次いで、台湾5,517億円 (同11.5%)、韓国4,247億円(同8.8%)、香港3,525億円(同7.3%)、米国3,228億円(同6.7%)の順であり、上位5カ国・地域で全体の71.1%を占めています。
インバウンドだけではなく、日本人による日本国内旅行の成長も順調に推移しています。2019年の日本人国内旅行消費額は、21.9兆円(前年比7.1%増)となりました。訪日外国人旅行者による旅行消費額のシェアは17.2%であることから、日本国内旅行における消費額の約80%強を日本人による国内旅行(日帰り・宿泊)が占めており、観光産業を考えるうえでは、依然として日本人国内旅行の重要性をうかがうことができます。
【日本国内における旅行消費額】
(出所:観光庁)
急速に増加するインバウンド(訪日外国人旅行客)と、順調に成長する国内旅行の恩恵を受けて、2019年の日本の観光産業、宿泊業界は空前の好景気に沸いていました。そして、いよいよ東京五輪が開催される2020年に向けて、誰もが日本の観光立国の明るい未来に期待をいだいていました。ところが、その期待は無残にも打ち砕かれることとなります。このような事態を一体だれが予想したことでしょうか?
次回は、新型コロナウイルス感染拡大以降の壊滅的な観光事情と、コロナウイルス感染の収束後の回復に向けた観光施策について、観光白書に基づき解説します。
(※1)住宅宿泊仲介業者80社(海外事業者:15社、国内事業者:65社)及び同法に基づく届出住宅の取扱いのある旅行業者5社(全て国内事業者)の計85社
次回は7月6日に公開する予定です。