今後の民泊・ホテル業界はどうなるのか?コロナ収束後の宿泊ニーズを考える
カピバラ好き行政書士 石井くるみさんが民泊を始めとした宿泊関連ビジネスの最新情報を紹介します。新型肺炎(新コロナウィルス)は宿泊ビジネスを破壊しています。新型コロナウイルス感染拡大で、急停止がかかった宿泊事業、旅行業界。宿泊事業や旅行に関わるビジネスに取り組む理由を改めて振返るタイミングなのかもしれません。(リビンマガジンBiz編集部)
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、ホテルや民泊施設の休業が相次いでいます。
入国制限や外出自粛要請により宿泊需要が下がる中、休業して変動費を抑える方が経済的に合理と判断しているからでしょう。悩ましいのは、「現在計画中または建設仕掛中の宿泊施設の計画を進めてよいのか」という問題です。
すでに完成・営業間近の施設でも、開業延期の発表が相次いでいます。直接的には利用者や従業員への感染防止という要因のほか、中国で製造される建築資材や家具の調達が遅れていることが主な理由です。
4月24日、ここ数カ月の業績悪化により、カプセルホテルを運営するファーストキャビンと関連会社が破産したことは、業界でも話題となりました。世界的な収束の目途が立たない新型コロナウイルスの感染リスクが仮に収束したとしても、今後の宿泊需要はどのようになっていくのでしょうか。
今後の宿泊業界を取り巻く環境は様々な道筋が考えられますが、次の様な懸念があります。
・世界的に不況となり、娯楽やレジャーをはじめ、海外旅行に対する需要が減退する。
・将来不安による消費引き締めと雇用の二極化により、日本人の国内旅行に対する需要も減退する。
・感染症回避のリスク軽減のため、人々が不要不急の移動を回避する。
・VR技術の発達など、代替手段が充実し、旅行へのニーズが減退する。
今後の危機管理、BCP(事業継続計画)を検討する際には、地震や災害に加えて「新たな感染症の蔓延」がリストに加わることは間違いありません。このような状況において、新しく宿泊事業参入に踏み切る事業者は減少すると考えられます。
しかし、「ピンチはチャンス」ともいわれる通り、競合他社が淘汰されていく現状の状況機会と考えることも可能です。次の通り、今後の宿泊業界にポジティブに捉えられる道筋もあります。
しかし、「ピンチはチャンス」ともいわれる通り、競合他社が淘汰されていく現状の状況機会と考えることも可能です。次の通り、今後の宿泊業界にポジティブに捉えられる道筋もあります。
・外出自粛要請が続く中、「引きこもり疲れ」のストレスを感じて、近場の旅行に対するニーズが高まる(いわゆる「マイクロツーリズム」)。
・働き方改革や在宅勤務の推進により、ホテルや民泊などを含め、場所を選ばず仕事に勤務する人が増加する。
・小規模事業者や、安易な事業参入をした競合他者が撤退することにより、宿泊施設の供給過多が解消される。
人類の「旅」の起源は古く、歴史を遡って概観してみれば、ヒトは狩猟採集時代から食糧を得るために旅をしていました。
定住生活が基本となり、生きていくための移動の必要性が薄れた後も、宗教的な目的の旅は国内・海外を問わず、盛んに行われています(日本では平安時代末頃には神社などへ巡礼が行われています)。今後も景色、歴史文化、風のにおいや食事など、現地でしか味わえない経験をもたらす旅行の価値がなくなることはないでしょう。
これからの外出や旅行のキーワードは「近場」で「短期間」、そして何より「安全性と質」が重視されるようになっていくかもしれません。
宿泊事業への参入、事業拡大を考える上では、改めて旅の持つ価値と今後の観光のありかたを再考し、「宿泊」サービスの提供者として、どのような事業展開を行うのか(コンセプト、旅行者属性、マーケティング等)を見直したうえで事業計画を立てる必要があります。投資にはリスクがつきものであることを認識し、サンクコスト(埋没費用)に判断を歪められることなく、事業を分析する冷静さが求められる時期と言えるのではないでしょうか。