石井くるみの民泊最前線
新型肺炎流行で打撃を受ける観光産業に対して政府が5000億円の支援
カピバラ好き行政書士 石井くるみさんが民泊を始めとした宿泊関連ビジネスの最新情報を紹介します。前回に引き続き、影響が増している新型肺炎(新コロナウィルス)の問題と民泊事業者がとるべき対策について考えます。(リビンマガジンBiz編集部)
新型肺炎流行で打撃を受ける観光産業に対して政府が5000億円の支援(緊急貸付け)を実施しています。
中国発の新型コロナウイルスによる肺炎への脅威が、世界的な広がりをみせています。
国内の感染拡大防止に関する取り組みもさることながら、IMF(国際通貨基金)が世界経済の見通しを下方修正するなど、新型肺炎が経済に与える影響が懸念されています。
「世界の工場」ともいわれる中国。
建設・不動産業界では、建築資材等の納品が遅れ、医療・化粧品メーカーからは製品を詰める容器の供給が滞り始めたと聞いています。
物流や製造業への影響は中長期的に及ぶと推測されますが、現時点で壊滅的な打撃を受けているのが観光産業です。
中国からの訪日外客数は2019年に約959万人(訪日外国人旅行者の約30%)に達し、インバウンド需要の最も大きなシェアを占めていますが、このたび中国政府は国内の旅行会社に対して、海外旅行の団体およびパック商品の販売中止を命じました。(個人が個別手配する旅行は対象外)
帝国データバンクの試算では、団体および個人パック旅行の販売中止措置にともなう2020年1~3月期の中国人訪日客による日本国内での消費額は、直接的に約1,422億円、関連産業への波及を推計すると、約2,846億円に相当する売上げが減少すると推計されています。
特に宿泊、飲食、商業施設、旅客運輸などは大きく影響するとみられます。
中国政府は販売中止の期間を定めておらず、この状況が4月以降も継続した場合は、さらに経済への影響が増大する可能性があります。
こうした状況を受け、厚生労働省は飲食店やホテルなど一時的に業績が悪化している中小企業に対して、日本政策金融公庫を通じて緊急の貸付けを行っています。
融資対象者は新型コロナウイルス感染症の発生により、一時的な業況悪化から資金繰りに支障を来しており、次のいずれの要件にも該当する旅館業、飲食店及び喫茶店を営む事業者です。
①最近1ヵ月の売上高が前年または前々年の同期と比較して10%以上減少しており、かつ、今後も売上高の減少が見込まれること
②中長期的に業況が回復し、発展することが見込まれること
融資資金は「経営を安定させるために必要な運転資金」を使途として、融資限度額は飲食店や喫茶店に対しては最大で1000万円、ホテルには最大で3000万円となっています。
また、旅館業や飲食店以外の事業者についても、既存の融資制度を活用できるよう貸し付け要件を緩和するなどとしていて、政府はこれらの費用として総額5000億円を確保することとしています。
融資制度利用にあたっては、「新型コロナウイルス感染症の発生による影響に関する確認資料」、振興計画の認定を受けた生活衛生同業組合の組合員については、生活衛生同業組合の長が発行する「振興事業に係る資金証明書」が必要となります。
貸し付けにあたる日本政策金融公庫は、全国の152の支店に専用の相談窓口を設け、相談に応じているので、詳細については、管轄の日本政策金融公庫各支店に問い合わせましょう。
また、政府は国内外の旅行者に向けた風評対策として、観光庁、日本政府観光局(JNTO)、観光関係団体などによる正確な情報発信も強化することとしており、訪日旅行を検討中の外国人、国内旅行を検討中の日本人の不安や疑問に対応できるよう体制を整備する意向です。
夏の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、政府、自治体などが民間企業と連携し、難局を乗り切ることが重要と考えられます。