石井くるみの民泊最前線
新型肺炎の感染拡大 民泊事業者の取るべき対応&ビジネスへの影響
カピバラ好き行政書士 石井くるみさんが民泊を始めとした宿泊関連ビジネスの最新情報を紹介します。今回は新型肺炎(新コロナウィルス)の問題と民泊事業者がとるべき対策について考えます。(リビンマガジンBiz編集部)
中華人民共和国湖北省武漢市で集団発生の報告があった非定型肺炎について、世界保健機関(WHO)は1月14日、当該肺炎患者の検体から新型コロナウイルスが検出されたと認定しました。
武漢市をはじめ、中国における患者数は、これまで4万名を超え、死亡者も908名(2020年2月10日時点)に達し、感染者は日々増えています。感染者は中国国内だけでなく世界に広がっており、1月15日には初めて日本国内感染者が確認されました。新型コロナウイルス関連肺炎に関しては、関係省庁が連携して水際措置を講じているところですが、武漢市からのチャーター便により帰国した邦人から陽性の報告があり、また、横浜市大黒埠頭停泊中のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」内においても集団感染が確認されており、不安が広がっています。
航空各社は一部の中国国内への国際線運航便で一時運休及び減便を決定しました。いつもは外国人旅行者でにぎわう観光地も閑散とし、宿泊ビジネスにも大きな影響が出ています。
このような状況において、住宅宿泊事業者はどのように対応し、事業を展開していけばよいのでしょうか?住宅宿泊事業法の届出住宅については、旅館業法第5条のような宿泊をさせる義務(いわゆる宿泊拒否制限)は規定されていませんので、宿泊者を受け入れないという選択肢も考えられます。
宿泊者を受け入れた場合、宿泊者が届出住宅滞在中に当該肺炎を発症する可能性もあります。厚生労働省及び観光庁は、ホテルなど宿泊施設関係者をはじめ、民泊(住宅宿泊事業)関係者に対して協力と対応を呼びかけています。宿泊施設は、下記を参考にして冷静かつ適切な対応を行いましょう。
(1)宿泊者に宿泊者名簿への正確な記載を働きかける。
(2)宿泊者に保健所が行う疫学調査等の宿泊者に関する状況把握に協力を依頼する。
(3)宿泊者に新型コロナウイルスに関する情報提供を行う。
(4)発熱又は呼吸器症状(咳など)の症状がみられた時には、必ず住宅宿泊事業者等に申し出るよう宿泊者に依頼する。
(5)宿泊者が、宿泊施設滞在中に発症を申し出た場合、マスクを着用するなどし、事前に医療機関へ連絡した上で受診するよう勧める。
(6)医療機関での診察を希望した宿泊者に対しては、医療機関の紹介等の支援を行う。(対応に困った際は、最寄りの保健所に相談する)
(7)宿泊施設スタッフ等は、マスクの着用や手洗いなどの感染症対策に努める。特に発症の申し出があった宿泊者と対応した者は、マスクの着用、症状が認められた際の医療機関での受診等適切な対応をとる。
なお、宿泊者が届出住宅滞在中に発症を申し出た場合は、遅滞なく住宅宿泊事業者は観光庁に、住宅宿泊管理業者は住宅宿泊事業者及び国土交通省不動産業課に、①報告日、②届出住宅名、③所在地、④報告者(管理業者)、⑤発症日、⑥発症者、⑦発生状況、⑧症状、⑨発症者に対する対応、⑩受診医療機関等をメールにて報告するよう要請されています。
外国人旅行者を対象としたコールセンター
日本政府観光局(JNTO)では、非常時の外国人旅行者の安全・安心確保のため、365日、24時間、多言語で対応するコールセンター「JapanVisitorHotline」を開設しており、新型コロナウイルス関連の問い合わせにも対応しています。
・電話番号 050-3816-2787
・対応時間 365日、24時間
・対応言語 英語、中国語、韓国語、日本語
・対応範囲 緊急時案内(病気・事故等)、災害時案内、一般観光案内
現時点まで、新型コロナウイルス関連では、「ホテルをキャンセルせざるを得なくなったが、返金を希望する場合はどこに問い合わせればよいか。」「咳、発熱の症状があり新型コロナウイルスでないか不安なため、検査を受けたい。」「ホテルに宿泊しているお客様に咳、発熱の症状がある。」という相談が寄せられているということです。また、日本政府観光局の公式ツイッターやウェイボー(中国版ツイッター)によって新型コロナウイルスに関する基本的な情報や手洗いうがい等の対策ポイント等を広く発信しているため、宿泊者に対して併せて活用するよう情報提供しましょう。
また、観光庁は、 感染症等を起因とした外国人観光客の減少等、経営環境の変化に直面している宿泊事業者等の不安を解消するため、地方運輸局及び内閣府沖縄総合事務局内に特別相談窓口を設置し、活用可能な支援策の紹介や、経済産業局・都道府県労働局等と連携した支援を行っています。
新型肺炎に関しては、日々その状況が変化しており、宿泊施設は常に最新の情報を入手し、過度に怖がることなく、施設の経営及び宿泊者に対して適切な対応していきましょう。