イタリア・ヴェネツィアの事例

イタリアのヴェネツィアは旧来、欧州人のリゾートとして発展してきました。1990年代後半からアジアを中心とした世界各国の旅行者が増加し、現在の年間旅行者数は約3,000万人に達しています。「水の都」として知られ、建築物が美しいヴェネツィアは、誰もが一度は訪れたいと思う世界的な観光名所です。
このような背景から外国資本が流入して、ヴェネツィアでは住宅価格が高騰し、地域住民の中には住み続けることが難しい人も出てきています。ヴェネツィア島部の居住人口は 18 万人から5万人に減少。旅行者の増加により路地や水上交通の混雑、店鋪等の観光地化が進むことで、住民の利便性や街の歴史的な雰囲気が損なわれるという問題が指摘されていきます。このように事象を整理すると、まるで街が旅行者に侵略されたかのような印象すら受けます。不動産価格の高騰はすでに日本の一部地域でも発生しています。
こうした状況を受け、ヴェネツィア市は、観光地区へのアクセスの事前予約制を導入し、また住居用の建物をホテルに変更するためには市議会の了承を必要とする規制を導入するなどの対策を行っています。また、転出した住民が再度ヴェネツィアに居住できるよう尽力するNPOも現れています。
バルセロナやヴェネツィアの事例から、旅行者があまりにも急激に増加することで、地域住民から観光政策への支持が得られなくなるだけでなく、旅行者を敵視する人や観光政策への抗議活動などにエスカレートする可能性がうかがえます。
「持続可能な観光」を実現するには、旅行者の満足度を上げるとともに、地域住民の日常生活にも配慮し、地域住民からの理解と協力を得ていくことが重要と言えます。
次回では、日本におけるオーバーツーリズムの現状と今後の課題について検討します。