石井くるみの民泊最前線
カピバラ好き行政書士 石井くるみさんが民泊を始めとした宿泊関連ビジネスの最新情報を紹介します。
今回は民泊、旅館・ホテル業と接道義務の関係について紹介します。(リビンマガジンBiz編集部)
墨田区で「旅館業の申請を検討している物件が2つあり、営業許可が取得できるかどうか見立ててほしい」との依頼を受けて、現場確認に立ち会いました。
浅草寺がある台東区よりも旅館業許可取得のハードルが低く、不動産価格がリーズナブルな墨田区は、相談が多い人気エリアです。
今回の候補物件は、1つは木造2階建ての店舗付き住宅、もう1つは、最上階がオーナー住宅となっているRC造4階建ての元料亭(すでに廃業)で、同じ道路沿いに並んでいました。
吾妻橋の駅の近くの閑静な住宅街でスカイツリーが間近に迫り、とてもきれいに眺めることができます。宿泊するにはまさにうってつけのエリアといえます。
ところが、候補物件には大きな問題がありました。
東京の古い住宅エリアで問題がに多いなりやすい「接道義務」です。
接道義務とは何か?
民泊や旅館業の論点に限らず耳にする機会が多い「接道義務」という用語。接道義務とは、建物の敷地が建築基準法上の道路に2m(場合によっては3m)以上接しなければならない義務のことをいいます。
建築基準法上の道路には以下のものがあります。
法第42条第1項第1号の道路 道路法による道路で幅が4m以上のもの
法第42条第1項第2号の道路 都市計画法、土地区画整理法、旧宅地造成事業に関する法律等の法令により許認可を受けて築造された道路で幅が4m以上のもの
法第42条第1項第3号の道路 建築基準法施行時に現に存在し、一般通行されていた幅が4m以上の道
法第42条第1項第4号の道路 道路法、都市計画法、土地区画整理法等の法令により築造予定の道路で、2年以内にその事業が執行される予定のものとして特定行政庁が指定したもの
法第42条第1項第5号の道路(位置指定道路) 土地を建築物の敷地として利用するために築造する幅4m以上の道路で、これを築造しようとする者が特定行政庁からその位置の指定を受けたもの
法第42条第2項の道路
(2項道路) 建築基準法施工時に現に建築物が立ち並んでいる幅4m未満の道で、特定行政庁が指定したもの
法第42条第3項の道路
(3項道路) 土地の状況によりやむを得ないため、特定行政庁が中心後退の幅を個別に指定いている道路
基本的に災害発生時の防災の観点等から道路には4m以上の幅が求められるのですが、日本では昔からある幅の狭い道路が多く、2項道路の指定を受けているものが多いです。私道や路地のような幅の狭いものも認められません。
接道義務を満たしていない建物は、火災発生時等の避難に支障があるので危険です。しかし、接道義務を満たさないからという理由で直ちに建物を取り壊すことは合理的ではないため、現状用途のままであれば使用することを認められます。
このような接道義務を満たさない土地は、原則として建物を取り壊し、新たに建物を建てることができずでず、いわゆる「再建築不可」と言われます。
東京都では、ホテル・旅館により接道義務の上乗せ規制が課されている!
建築基準法上、建物は「一般建築物」と「特殊建築物」に大別されます。戸建住宅は「一般建築物」に分類され、ホテルや旅館のように不特定多数の人が使う建物は「特殊建築物」に分類されます。
東京都は、東京都建築安全条例において、特殊建築物に対して特別の接道義務を設けており、
旅館やホテルについては、少なくとも道路に4m以上接していなければならないと建築基準法よりも厳しい要件を求めています。
(引用)
第十条の三 特殊建築物の敷地は、その用途に供する部分の床面積の合計に応じて、次の表に掲げる長さ以上道路(前条の規定の適用を受ける特殊建築物の敷地にあっては、同条の規定により接しなければならない道路)に接しなければならない。
特殊建築物の用途に供する部分の床面積の合計 長さ
500平方メートル以下のもの 4メートル
500平方メートルを超え、1000平方メートル以下のもの 6メートル
1000平方メートルを超え、2000平方メートル以下のもの 8メートル
2000平方メートルを超えるもの 10メートル
※東京都建築安全条例は東京都内全域に適用されます。