石井くるみの民泊最前線
今回は、民泊事業を開始するための資金調達方法として注目されている「クラウドファンディング」について解説していただきます。(リビンマガジンBiz編集部)
(画像=写真AC)
民泊や旅館業をはじめるには、宿泊させるための「ハコ」が必要であり、不動産の取得は重要ポイントです。しかし、立地の良い不動産は価格が高く、築古の不動産は担保価値の低さから金融機関の融資がつきにくいなど、不動産取得時の資金調達に苦労することが少なくありません。
そこで、金融機関からの融資に代わる資金調達手段として注目されているのが「クラウドファンディング」です。民泊事業におけるクラウドファンディング活用について詳しく解説します。
クラウドファンディングの定義と仕組み
クラウドファンディングとは、群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語で、人々がインターネットを通じて、社会的事業や新規事業等に寄付や投資等を行うものをいい、IT技術が発展した近年、急速に広がりを見せています。
クラウドファンディングは一般的に、資金調達を希望する「資金調達者」、資金調達者の事業に寄付や投資をする「資金提供者」、そして資金調達者と資金提供者をインターネット上でマッチングする「プラットフォーマー」の3者から構成されます。
資金調達者はプラットフォーマーに対して、実施するプロジェクトの資金提供者募集の依頼をします。プラットフォーマーは資金調達者の事業計画の内容を検討し、審査を経て資金提供者の募集が行われます。
クラウドファンディングの類型
クラウドファンディングは、資金提供者が資金調達者から受け取る対価の性質に応じて①寄付型、②購入型、③投資型の3つに分類されます。このうち、投資型については、金融商品取引法や不動産特定共同事業法といった法規制の対象となります。
図表2:クラウドファンディングの類型と法規制
類型
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対価
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対価の例
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法規制
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寄付型
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なし
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古民家再生の寄付募集
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―
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購入型
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商品、サービス
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民泊施設の宿泊券
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特定商取引法
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投資型
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有価証券
(組合出資金)
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民泊事業から得られる収益の分配を受ける権利
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金融商品取引法
不動産特定共同事業法など
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出所:日本橋くるみ行政書士事務所作成
①寄付型クラウドファンディング
寄付型クラウドファンディングとは、資金提供者が対価を受け取らないものをいい、教育、環境保全、災害支援といった公益性の高い事業の運営において利用されます。寄付の募集活動がインターネット上で行われるイメージです。
②購入型クラウドファンディング
購入型クラウドファンディングとは、資金提供者が対価として商品やサービスを受け取るものをいいます。
購入型クラウドファンディングは、資金調達の目的以上に、広告宣伝・マーケティングの手段として活用されます。筆者が関与したゲストハウス「SAMURAIS HOSTEL Ikebukuro」では、購入型クラウドファンディングにおいて、施設の開業後に使える宿泊券やオープニングパーティーへの招待券を販売し、67人の資金提供者(パトロン)から総額1,135,900円の資金を調達しました
対価の例
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購入代金
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支援数
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オリジナルステッカー
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3,000円
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8人
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ドミトリー1泊宿泊券
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3,200円
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14人
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オープニングパーティー招待券
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6,500円
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16人
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個室1泊宿泊券
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9,000円
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8人
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スペシャルルーム1泊宿泊券
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18,000円
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4人
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ゲストハウス開業セミナー
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100,000円
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1人
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出所:CAMPFIREの掲載ページより作成
購入型クラウドファンディングは、インターネットを通じて商品やサービスを販売する「通信販売」に該当するため、消費者保護の観点から、資金調達者は特定商取引に関する法律に基づき、商品・サービスの対価の額、支払の時期、支払方法などの一定事項を表記する義務を負います。
③投資型クラウドファンディング
投資型クラウドファンディングとは、資金提供者が対価として有価証券を受け取るものをいいます。①寄付型、②購入型のクラウドファンディングは、性質上募集できる資金に限界がありますが、資金提供者に投資リターンを提供する投資型では、大きな資金を集めることができます。金融機関からの融資が受けられない場合や、融資を受けるには自己資金が足りない場合等には、投資型クラウドファンディングの活用が検討に値します。
>>2ページ目:資金提供者及びプラットフォーマーに課せられる規制(続き)