石井くるみの民泊最前線
カピバラ好き行政書士 石井くるみさんに民泊の最新情報を紹介してもらいます。(リビンマガジンBiz編集部)
(画像=写真AC)
届出の煩雑さと、家主不在型の申請の遅れが原因
~6万件のうち、わずか724件の届け出しかない(※)~
全国的に民泊営業を解禁する住宅宿泊事業法(民泊新法)施行の6月15日まで残り2週間を切りましたが、同法に基づく住宅宿泊事業の届出は全国的に低調な状況です。民泊大手仲介サイトに掲載されている全国の民泊施設は6万件余り存在するところ、届出が受理された施設は、724件(※5月11日時点)。全体の2%にも及ばない状況です。本編から2回に渡り、住宅宿泊事業(民泊新法)の届出が進まないのはなぜか、解説していきます。
筆者の事務所でも東京近郊の民泊物件に対する届出手続を複数受任しています。そのうち、5月下旬に東京都港区で受理された届出は同区で2件目、処理中の申請件数を合わせても10件足らずということでした。外国人観光客に人気エリアの東京都新宿区においても、申請件数は17件(5月23日時点)。行政担当者も、予想していたほど件数が伸びないと話しています。
なぜ、住宅宿泊事業の届出が低調なのか。筆者は、次の3つの原因が存在するとみています。
①届出手続の煩雑さ
まず、住宅宿泊事業の届出手続の煩雑さが挙げられます。制度の運用開始前は、インターネットを通じた簡易な届出手続となることが期待していました。
しかし実際には
・電子署名システムの導入
・保健所との事前協議
・近隣住民への周知手続き
・建築士への建築基準法チェックシートの作成依頼
・消防署との協議や工事の実施
・事業系ごみ排出のための環境局との協議
など、多くの複雑な手続と書類作成が必要であることが分かりました。
旅館業の許可申請などの行政手続に慣れた行政書士はともかく、一般の方が届出を行うのは、かなりの時間と労力を要します。このような事務手続の煩雑さから、まだ書類提出まで至っていない、または断念したホストが少なからず存在すると推察されます。