隔週月曜配信「石井くるみの 民泊最前線」
カピバラ好き行政書士 石井くるみさんに民泊の最新情報を紹介してもらいます。
元旦公開の今回は、2018年の民泊市場を予想してもらいました。(リビンマガジンBiz編集部)
(画像=写真AC)
新年あけましておめでとうございます。
2018年は、いよいよ住宅宿泊事業法(民泊新法)がスタートし、改正旅館業法の施行が予定されています。
旅館とホテルの営業種別が統合され、私達の国内・外旅行にも「民泊を利用する」という、選択肢がますます広がることでしょう。
本年は「民泊新法元年」として、宿泊業界の大きな転換期となりそうです。
もちろん住宅業界にとっても同じことがいえます。
民泊に携わる事業者にとっての最大の関心事は、6月に決まっている新法施行後の宿泊市場動向ではないでしょうか。現状で全国5万件以上存在すると言われる民泊物件が、新法施行によってどう変わるかが、以降のビジネスを大きく左右すると考えられています。
【民泊新法施行後、各社が保有している民泊物件の選択肢】
①民泊からの撤退(届出を行わない)
②現状維持(届出を行い引き続き営業)
③新規参入
上記によって、民泊物件がどのような増減をするかで、市場のバランスが大きく変わる可能性があります。
民泊新法(住宅宿泊事業法)と改正旅館業法による違法営業者に対する罰則強化により、これまで旅館業法の許可なく営業してきた民泊の大半で営業の継続が困難になり、市場から撤退した場合、民泊施設が一挙に減少することが予想されます。
その反面、現状の民泊市場は、無許可施設の過剰供給で価格(宿泊単価)がかなり下がっているため、施設数の減少により供給が引き締まり、価格の上昇も期待できます。
一方で、新規プレイヤーの参入による施設の増加も予想されます。これまでの民泊市場はベンチャー企業など、新しく小規模なプレイヤーが主流でした。しかし、民泊新法成立前後から、楽天・LIFULLや野村不動産、大和ハウス、ミサワホームなどの不動産大手企業がホテル事業への参入意思を表明しており、今後この流れはさらに加速されそうです。
また、インバウンド需要の拡大を受けて、民泊施設だけではなくホテルも急ピッチの建設が進んでおり、一部では宿泊施設の供給過多の懸念も持ち上がっています。
大資本とブランド力を持つ大手企業がホテル・民泊事業へ参入することは、これまで市場を盛り上げてきたベンチャー企業には脅威といえます。そこで、今まで培った民泊に関するノウハウや機動力を強みとして、大企業と提携をしたり、買収されたりするベンチャー企業も増えるのではないでしょうか。
宿泊だけではなく、増加する外国人旅行者をターゲットとした新しいビジネスも広がっています。大手民泊仲介サイトAirbnbは、商圏を主力の「宿泊」だけではなく「体験」に広げています。宿泊と体験を組み合わせたツアーは私達にもなじみのある旅行スタイルです。民泊利用者にも魅力的に映るでしょう。
また、ビジネストリップ(出張)ニーズの拡大も見過ごせません。Airbnbは企業向けに出張に対応した民泊物件のみを表示できるサービスも展開しています。
国内勢では、TRIPBIZが運営する「TripBiz」が、代表的なビジネス出張専用の民泊仲介サイトとして挙げられます。また、シンガポールのサービスアパートメントプラットフォーム「MetroResidence」が楽天からの出資を受けて2017年の8月から本格的に日本進出しています。
さらに、短期滞在の民泊と、中・長期の出張利用者を受け入れるマンスリーマンションやSA(サービスアパートメント)のかけ合わせるモデルは、年間営業日数180日という制限がある民泊新法下における新しい運用手法としても注目を集めています。
民泊法施行後は、旅行業者も民泊施設の取扱いを始めることから、OTA(オンライン旅行会社)各社の創意工夫と事業展開が期待されます。
■民泊と地方創生
民泊は、宿泊施設の不足を補う受け皿としてだけでなく、地方経済活性化や地方創生の観点からも注目を集めています。
観光庁の統計によると、近年は都市部よりも地方部において訪日外国人の流入が伸びており、地方エリアへの旅行者が増加しています。四季折々の味わいが楽しめる日本の自然、食、文化に魅力を感じる外国人旅行者は多く、特にリピーター層の間では、温泉や田舎暮らし体験など、より日本らしさ体験できる地方部への旅行が人気を集めていくでしょう。
日本の地方の魅力が再発見され、旅行者・地域住民双方に喜ばれる民泊施設の増加が期待されます。