毎週月曜配信「石井くるみの 民泊最前線」
カピバラ好き行政書士 石井くるみさんに民泊の最新情報を紹介してもらいます。
(リビンマガジンBiz編集部)
(画像=写真AC)
2018年6月に施行される住宅宿泊事業法では、住宅を民泊施設として営業できる日数が年間180日以下に制限されています(※地域によっては自治体が定める条例により、更に営業日数が制限される可能性があります)。
そこで、事業者は民泊営業日数以外の残り185日をいかに活用するかが課題となります。なかでも家具付きの短期賃貸、いわゆる「マンスリーマンション」として活用することが1つのプランとして考えられます。本日は、民泊とのハイブリットで注目が集まる「マンスリーマンション」のビジネスモデルを民泊との相性という観点から考察します。
読者の方でマンスリーマンションに滞在した経験をお持ちの方はどの程度いらっしゃるのでしょう。筆者は以前、1カ月ほど利用したことがあります。部屋には、ベッドや洗濯機、冷蔵庫、キッチンや調理器具・食器など生活に必要な設備や道具が一通り整っているため、身ひとつでもすぐに生活できます。ホテルより落ち着いてくつろげる感覚で、滞在費も抑えることができるので便利でした。
マンスリーマンション利用者は、1泊や2泊の短期ではなく、数週間あるいは数カ月のまとまった期間をその滞在先で生活する必要がある人ということになります。国内外の仕事や出張などビジネス利用がその多くを占めます。
【マンスリーマンション利用者】
・法人・ビジネス需要
・予約のタイミングは1週間~1カ月前
・周辺の交通機関などの利便性を重視
・単身者~少人数(1-2名)であるため、狭い部屋でよい
・仕事や作業用の机やWi-Fi環境の整備
・調理可能なミニキッチンや、洗濯機といった設備が喜ばれる
交通利便性(アクセス)の重視や、Wi-Fi環境やキッチン、洗濯機等が喜ばれる点は、民泊利用者と共通しています。しかし、民泊利用者の多くは家族や友人グループといった複数人(3~10名)であり、大人数収容可能な広めの部屋が好まれます。
単身者向けにワンルームマンションの民泊を都内などでは見かけますが、ホテルと競合するため競争が厳しいと言われています。反対に、マンスリーマンションのニーズは単身者がメインです。また、民泊の利用目的は観光などの旅行が多く、予約のタイミングは2~3カ月前で、滞在期間は2~3日程度です。したがって、民泊とマンスリーマンションでは利用者の人数や、予約時期、滞在期間が対照的だと考えられます。
以上からも分かるように、インバウンド観光客が利用の中心となる民泊と、ビジネス滞在がメインのマンスリーマンションでは、相違点が多くあります。よく、民泊コンサル企業や民泊代行企業が、民泊とマンスリーマンションを併用するといった提案をしています。しかし、住宅宿泊事業とマンスリーマンションの併用モデル構築には、利用者の属性をよく分析したうえで戦略を練る必要がありそうです。