毎週月曜配信「石井くるみの みんぱく!最前線」
カピバラ好き行政書士 石井くるみさんに民泊の最新情報を紹介してもらいます。
現在、インバウンド需要で盛り上がっている民泊業界は、どれほどの市場規模なのでしょうか。来日外国人数や、外国人旅行者消費額の推移といった、民泊を取り巻く背景も踏まえて解説していただきました。(リビンマガジンBiz編集部)
(画像=写真AC)
民泊市場拡大で広がるビジネスシーン
民泊という言葉に注目が集まってから数年が経ちます。今や民泊市場は、宿泊業だけではなく、その周辺分野にも新たなビジネスチャンスを生み出しています。
代表的な例として「民泊運用代行会社」が挙げられます。民泊の利用者は外国人旅行者が多いため、民泊運営には、外国語でのコミュニケーションが必要になります。また、緊急時体制の確保といった部分も課題になります。
民泊オーナーだけでは、複数の民泊物件を管理することは難しいでしょう。そこをビジネスチャンスであると捉えたのが、民泊運用代行会社です。宿泊者とのコミュニケーションや、チェックイン・アウトの管理、トラブル対応などを民泊オーナーに代わって行います。現在、国内には30以上の民泊代行会社が存在しています(※)。民泊運営代行業には、不動産会社が参入するケースも見られます。住宅宿泊事業法(民泊新法)施行後は、民泊運用代行業を行うためには、国土交通大臣に対して住宅宿泊管理業の登録が必要となります。
※注1(Airstair「民泊サービス業界マップ 2018」より)
その他にも、宿泊者退去後の部屋の清掃業務に特化した「民泊清掃代行会社」や、「スマートロック」といったツールを開発し、鍵の受け渡しをスムーズにする企業なども増加しています。
民泊市場は今でも拡大傾向にあります。これからも大きなビジネスチャンスがあるといえるでしょう。また、不動産管理会社にとっては、空室の有効活用という点で、将来性があると言えす。
訪日外国人旅行者数・訪日外国人旅行消費額の増加
近年、「民泊」に注目が集まっている最大の理由は、日本を訪問する外国人が急増し、ホテルなど宿泊施設の不足が深刻化しているためです。京都などの観光地はもちろん、東京や大阪などのビジネス街でも、「出張時にホテルの予約が取りにくくなった」「料金が高騰した」などホテル不足を感じているビジネスマンも多いことでしょう。
訪日外国人旅行者数の推移(政府観光局統計データより)
(画像=リビンマガジンBiz編集部)
観光庁の発表によると、訪日外国人旅行者数は、2011年は622 万人であったのに対し、2016年は約2,404万人と、過去5年でおおよそ4倍に増加しています。2017年も9月の時点で2,000万人を突破し、順調に推移しています。2020 年の東京オリンピックの開催を控え、今後も増加が期待されています。
また、2015年の訪日外国人旅行消費額は3兆4,771億円と、年間で初めて3兆円を突破しました。買い物代に次ぎ、外国人旅行者の支出費目の第2位は宿泊費であり(平均金額は4万2千円)、外国人旅行者の増加によるメリットは、宿泊業で大きいと考えられます。
訪日外国人旅行消費額の推移(観光庁 統計情報・白書より)
(画像=リビンマガジンBiz編集部)
民泊の定義
あらためて民泊とは、住宅(戸建住宅、共同住宅等)の一部、又は全部を提供する宿泊サービスをいいます。民泊は古くから存在する概念であり、「帰省先の親類の家に泊まる」、「旅行先で友人宅に泊まる」というスタイルが主流でした。近年は自宅の一部や所有する投資用マンションの空室を見知らぬ旅行者に提供するスタイルが増えています。民泊を反復継続して有償で行う場合、我が国においては旅館業法の許可が必要となります。
政府の戦略と規制緩和
大手民泊仲介プラットフォーム「Airbnb」には、世界191カ国以上の6万5,000を超える都市で、400万件以上の物件が登録されています。日本の物件数は約5.5万件です。一般的なホテルとは異なるユニークな施設や、施設提供者との交流、現地での体験などシェアリングエコノミー(※)ならではのサービスが好評で利用者は順調に増加しているそうです。
※注2(個人が保有する遊休資産の貸出しを仲介するサービス)
少子高齢化の進展が続く日本経済の中で、外国人旅行者の消費を通じて、外需を取り込むことは、持続的な経済成長の大きな鍵となります。外国人観光客の急増に伴う宿泊施設の不足解消は急務となっており、政府も民泊の必要を認めています。
旅館業法の改正や、特区民泊(国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業)、新法(住宅宿泊事業法)の制定など、さまざまな規制緩和が打ち出されることを受け、地方創生を掲げる郊外の自治体や事業者は、空き家などの活用による地方経済活性化のチャンスと捉えています。