毎週月曜配信「石井くるみの みんぱく!最前線」
カピバラ好き行政書士 石井くるみさんに民泊の最新情報を紹介してもらいます。
今回は、今京都市で増加している「違法建築簡易宿所」の購入トラブルを紹介しています。(リビンマガジンBiz編集部)
(画像=写真AC)
近年、京都市では簡易宿所(ゲストハウス)が急増し、その売買も活発になっています。
簡易宿所の購入を検討されている方に注意していただきたいことがあります。それは、旅館業の許可は得ているが建築基準法に適合していない、いわゆる「違法建築簡易宿所」が存在するということです。では、なぜそのような物件が、市場に出回っているのでしょうか。
その理由を時系列で紹介します。
①この2、3年で、行政による用途変更の確認申請が不要な100㎡以下の違法簡易宿所の許可取得が急増
②今年の春ごろから、許可基準が厳しくなり100㎡以下の物件でも建築基準法違反が明らかな場合は許可が下りなくなる
③既存の許可物件においても建築基準法違反を理由に営業停止を受けるケースも発生
④営業停止指導を受ける前に違法許可物件を売り抜けようとする事業者が増加
①100㎡以下の違法建築簡易宿所の増加
通常、旅館業の営業許可を得るためには、旅館業の構造基準を満たすだけではなく、建築基準法および消防法上も「ホテル・旅館」の基準を満たさなくてはなりません。ところが、特殊建築物への用途変更の面積が100㎡を越えない場合は、行政の確認申請手続が行われません。そのため、本来は必要な法令適合を欠いた旅館業申請が多数行われ、行政も建築基準法令への適合を確認せずに許可証を交付していました。
②違法建築簡易宿所に対する許可審査の厳格化
しかし、半年ほど前から「京都の旅館業許可が取りづらくなった」「以前は許可取得できたような申請が通らなくなった」という事例が増えはじめました。私の事務所にも「京都では許可が取れないから、東京でビジネスを考えています」という相談が寄せられるようになりました。
京都市医療衛生センターによると「以前は旅館業の基準(=トイレ個数や玄関帳場の有無など)のみで許可・不許可を判断していた。しかし現在は、建築指導課と相互に情報共有を行っている。したがって、建築基準法上の法令に適合していない場合は、建築指導課からの指導により不許可としている」ということです。
③既存の違法建築簡易宿所に対する指導・営業停止処分
さらに、行政は既存の違法建築簡易宿所の営業者に対し、施設を建築基準法に適合させるよう指導を始めました。工事により建築基準法に適合できれば良いのですが、改修工事に莫大な費用がかかる場合や、物理的に是正不可能な物件もあります。建築基準法への不適合が明らかな物件では、旅館業の営業停止が指導されるようになりました。
④違法建築簡易宿所の売り出し増加
このような状況を受け、違法建築簡易宿所を、営業停止の指導が入る前に売り抜けようとする事業者が増加しました。このような物件は「旅館業許可物件」として売買されるものの、購入後再び許可を申請しても認可が下りません。
京都市の医療衛生センターによると、「実際の営業はできなくても構わないから記念として旅館業営業許可証が欲しい」と申請してくるケースもあるそうです。医療衛生センターの担当者は「旅館業の構造要件を満たしている場合は許可証を交付しないわけにはいかないが、このような施設を知らずに購入した人から、簡易宿所を営業できずに困っているという内容の問い合わせが急増している。感覚としては、受けた電話で3本のうち1本はこのような相談だ」と話していました。
旅館業の許可を得ている物件であっても、明らかに建築基準法に適合していない次のような物件の購入は避けるべきです。
・木造3階建ての戸建簡易宿所(3階建ての場合、耐火建築物でないと適合しない)
・接道義務を満たしていない(再建築不可の路地上敷地・間口狭小物件など)
これらに該当しない場合でも、中古簡易宿所の購入にあたっては専門家のアドバイスを得る、といった慎重な検討が必要です。
「過去に旅館業の許可を取得したことがある」「現在許可を取得している」からといって、今後も営業可能なことが保証されているわけではありません。くれぐれも注意しましょう。