不動産売却後に判明するトラブル
不動産を売却することになり、契約に伴う諸手続きを済ませ登記の移転や引渡し・代金の決済などの主要な手続きを完了、という一連の行程を終えた場合でも常に万事終了というわけには参りません。
良く耳にする例では、引渡し後に買主が使用を開始したところ、思わぬシロアリ被害等の判明により「ちょっと待った!」という事態に陥ることです。
もちろん、不動産売買という契約事ですから事前に綿密な物件の調査や検討が必要なのはいうまでもないですが、いざこのような事態に陥った時に動揺せずに粛々とした手続きがとれるような心の備えもまた必要です。
今回は、不動産売却・引渡し後のシロアリ被害判明というケースを念頭に置きながら、瑕疵担保責任という制度を考えていきたいと思います。
瑕疵担保責任とは
不動産の売買等に携わっていれば良く耳にする用語です。民法に規定される法的制度であり(民法570条、566条)、法律用語です。
不動産のような特定物の売買では、その物の個性に着目して取引がなされるため対象となる物はこの世に一つしか存在しません。そして、売主は目的物の引渡し義務の履行に際し、「その物」を現状で引き渡すべきことになっています(同483条)。しかし、仮にその物の気付かない場所に瑕疵(キズや故障)があった場合には買主が期待した性能が発揮されないことになり、この結果は公平なものとはいえません。
そこで、買主が支払う代金との等価的均衡を図る趣旨から、法は特定物の「隠れた瑕疵」について売主に対し法定の無過失責任(売主の過失を問題としない責任)を問えることとしているのです。
この法的責任の内容としては、損害賠償及び契約の解除があります。
瑕疵担保責任の要件と効果
主要な要件である「隠れた瑕疵」とは、取引上通常要求される注意をしても発見できないような瑕疵をいいます。
例えば、当初から買主が建物のシロアリの侵食被害に気づいていたり(悪意)、通常の注意を払えば知り得た(有過失)という場合には、瑕疵担保責任は生じません。
これは、同制度の趣旨が買主の信頼を保護することにあるからです。
また、「瑕疵」は契約時に隠れているもの、つまりこの時点で存在していることを要し、契約締結後に発生した後発的な瑕疵は同制度による責任の対象外です。
効果としての損害賠償の範囲は諸説ありますが、一般には瑕疵がないと信じたことにより生じた損害の賠償を求め得るという認識で良いかと思います。
また、契約の解除は、瑕疵の存在により「契約をした目的を達することができない」場合に認められています(570条、566条1項)。
次稿では、売主としてこの瑕疵担保責任を負わないために、買主としてこの担保責任を問うために、どのような方策があるかをみていきたいと思います。