借主負担DIY型賃貸の特徴

 

 前稿で紹介したように、従来の賃貸借契約では、賃貸人である大家さんには対価となる賃料を取得する以上のメリットはありませんでした。
 そのため、オーナー自身が建物を持て余していたとしても、①賃貸の経験がない、②入居者のマナーが不安、③リフォーム費用が捻出できない、といった懸念が生じなかなか賃貸に踏み切れないという現実がありました。
 この中でも③の経済的理由は大きく、家賃をもらえるにしても他人に貸すほどのコンデションに整えるまでの費用が負担できないという方が大半でした。
 ところが、借主負担DIY型賃貸では、オーナーは何ら手を加えない原状有姿のまま建物を貸出し借主自らリフォームやDIY等の改装を気ままに実施し、退去時に改装部分は元に戻すことなく退去できるのです。
 これによりオーナーは、自らの負担のないまま貸し出しを開始でき、その後の故障・不具合につき修繕義務の負担もなく、他方、借主も相場よりも低い家賃設定で借りることができる上、建物を自らの好みやアイディアに基づき自由にカスタマイズできる楽しみを得ることができる、というオーナーと入居者の双方にとってWIN-WINの関係を実現することになるのです。

   

空き家問題と借主負担DIY型賃貸の関係

 

 このWIN-WINの関係を空き家という視点でみるといかがでしょうか。
 空き家は、そもそもオーナーにとって税金等のコスト負担も大きく、かといって売却の実施に至るまでこの負担から逃れることはできません。
 しかし、このDIY型賃貸では、家賃は相場より低いとはいえ確実なキャッシュフローが見込めるばかりか、借主の修繕や改装等により建物の経済的価値はより高まるといえます。加えて、借主自らが好みでカスタマイズした物件という性質上、長期に渡った入居が見込まれるのです。また、いざ売却となっても、賃貸物件のオーナーチェンジという形で売りに出すことで、売却自体の障害になることもないでしょう。
 借主にとっても、元々空き家という建物を安価の家賃で借りられるばかりか、退去時の原状回復を前提としない自由なカスタマイズが認められていることにより、住居という最も身近な空間を非オーナーの立場ながら存分に改造できるということは大変魅力的な状況なのです。
 このように考えてみると、空き家問題と借主負担DIY型賃貸は抜群の相性を有している、と言っても良いでしょう。

DIY型賃貸は普及するか
 

 最後のテーマは、この空き家問題と相性の良いDIY型賃貸がどこまで普及するかという点です。
 個人的には、この借主負担DIY型賃貸は、空き家の売却に行き詰まった場合や、将来の売却を考えているが時期は未定、という場合の選択肢としては検討に値する一手だと思われます。
 あとは、世の人々の関心として自らのリフォームやDIYがどこまで浸透するか、という一言に尽きるのではないでしょうか。

 インテリア雑誌などでは従来から盛んに取り上げられてきたDIYですが、前職の技術を有したまま定年退職された団塊の世代の方や、手先の器用な若者達の興味を喚起し、さらなるリノベーションブームが巻き起こることを期待したいものです。

 空き家問題では、“建物は居住しなければ朽ちていく”とほとんどの方が紹介しています。
 この社会問題を解消し、全国の建物の劣化を食い止めるため、DIY型賃貸がより一般化するようになる時代の到来を願って止みません。

 
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