空き家問題を解決する典型は売却 

 昨今、社会問題化してきた空き家問題。個人の意思とは別に相続や贈与等により誰しもが空き家オーナーになる場合が想定されます。
 現状として、この空き家所有の悩みから最も手っ取り早く逃れる方法の典型は、やはり売却といえます。契約を完了させ、無事登記の移転まで済ませれば、空き家から生ずる負担や責任から免れるからです。
 ただ、買い手がいるのか、いたとしても買い叩かれるのではないか、という懸念は当然あります。何事もタイミングの違いや交渉力の有無で効果も変わってくるからです。
 まして不動産の売買ですから、処分を行うにしてもやはり最も経済合理性に適う方法で完結させたいと誰しも考えることでしょう。
 そこで今回は、空き家問題から解放されるために売却と比肩する有効利用法として、全く新しい発想の下に生まれた方法をご紹介します。

   

新しい形態による賃貸借契約

 

 今回ご紹介するのが“DIY型賃貸”といわれる方法であり、2016年に国土交通省が有識者による検討会の最終報告を経てガイドラインを発表し、これに伴いガイドブックや契約書式例等を公開しています。

     ↓ 国交省HP、有識者検討会最終報告書より ↓
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_fr3_000022.html

 この内容を踏まえ、DIY型の意義内容、そしてどのような点が新しい発想なのか等につきみていきたいと思います。
 まず、DIY型賃貸とは、私が試みに定義付ければ“通常の賃貸借契約の基本である、賃貸人の義務としての修繕義務、及び賃借人の退去時の義務としての原状回復義務を転換・変容させた賃貸”といえるでしょうか。
 そして、このDIY型の中で特に新しい発想で生まれたといわれるのが、“借主負担DIY型”と紹介される賃貸こそが上記国交省のガイドラインの眼目となる形態です。

どの点が新しいと言われるのか

 

 先ほどの定義からも分かるように、通常の賃貸借契約では、対象となる建物の修繕義務は大家さんである賃貸人が負担し、同物件へのリフォーム等の原状変更は原則禁止とされ、また許可により変更を施しても借主は返還の際に原状に戻すものとされています。
 これは賃貸借契約の権利義務である、使用収益させる義務・修繕義務(民法606条)、保管義務(同400条)原状回復義務(同616条)の内容から導かれるものです。
 ところが、借主負担DIY型賃貸では、借主が建物の修繕等を自らの負担でDIY等により改装を行い、退去時にも原状回復の必要はなく費用も徴収されないという内容に転化しています。
 いわば建物のカスタマイズ権限を賃借人に付与する、ことになるため借主の行為の自由度が飛躍的に高まり、従来リフォーム費用の負担や賃借人との折衝の手間を理由に賃貸に及び腰だったオーナーを積極的に賃貸活用の方向へと導くのです。
 
 要するに、従来型賃貸借契約では、オーナーが取得した物件を賃貸に出すことに消極的になるほど空き家はますます増加するばかり……そこに着目し登場したのが借主負担DIY型賃貸借なのです。
 そこで次稿では、借主DIY型賃貸の登場によりどのように空き家の解消につながるか、具体的な仕組みをご紹介いたします。

 

 
  • line
  • facebook
  • twitter
  • line
  • facebook
  • twitter

本サイトに掲載されているコンテンツ (記事・広告・デザイン等)に関する著作権は当社に帰属しており、他のホームページ・ブログ等に無断で転載・転用することを禁止します。引用する場合は、リンクを貼る等して当サイトからの引用であることを明らかにしてください。なお、当サイトへのリンクを貼ることは自由です。ご連絡の必要もありません。

このコラムニストのコラム

このコラムニストのコラム一覧へ