借地権の潜在能力
前稿では、借地権という権利内容にともなう制限として、地代・更新料という継続的なコスト負担と建物売却・立替時の地主の承諾を要する点(賃借権の場合)などを採り上げました。これらは、いずれも借地権付物件の持つデメリットと位置付けて良いと思います。
そこで今回は、借地権であることにより逆に何か利益をもたらさないか、メリットを探ってみましょう。
① 資産価値
借地=借り物という意識から一般に資産価値は無いように思われがちですが、全くそんなことはありません。むしろ、前稿で触れた借地借家法(旧借地法も同じ)の強力な保護の下、地代を支払いつつ建物を通じて土地の使用収益を続ける限り、よほどのことがない限り更新を重ねることのできる強力な権利といえます。
このことから、借地権それ自体が相続・贈与の対象にもなる(もちろん建物の所有権に伴う)など税法制の上でも大きな資産価値が認められています。
② ランニングコスト
借主として地代を支払う反面、逆に所有はしない以上、固定資産税・都市計画税を払う必要がありません。そうすると、先の地代のランニングコストを考えたとき、所有者なら負うべき両税金の年間負担分からは解放されるのであり、その分差し引けると考えることができます。これはネット利回りを考える際には重要なポイントとなります。
③ 初期費用とキャッシュフロー
まず、何よりも権利100%の土地所有権を買うわけではないことから、不動産トータルでの購入費用を30%程度抑えることが可能になります。
また同様に、土地の所有権を買うわけではないので土地部分の不動産取得税は発生しません。
さらに、土地の所有権登記をする必要もないため、その分の登記費用をも抑えることができます(土地上の建物所有権登記が借地権の公示機能を果たします)。
以上の購入費用、不動産取得税(土地)、登記費用(土地)の3点は、初期投資費用を抑える点で大幅なメリットと位置づけることができます。借地権付物件の投資の肝といえるでしょう。
そして、これら初期費用の抑制が利回りの大幅な向上をもたらし、結果これがキャッシュフローの増加という投資妙味を実現させることになるのです。
不動産投資と指針
現代においても、借地権はれっきとした資産であり、権利内容からくる制限があるとはいえ不動産投資を容易・円滑にする一つのシステムであることは、ご理解いただけたかと思います。
投資を考える際に大切なのは、結局は“投資指針である”といわれます。
これを借地権案件で考えると、要は“所有それ自体にこだわるのか”“資産価値を重視するのか”あるいは、“単純にキャッシュフローの増加を望むのか”の選択に尽きるわけです。
この軸にブレがある限り、なかなか方向性を見出すことができず、せっかくの投資機会を逃すことにもつながりかねません。
もし、後者であるキャッシュフロー増加を追求し不動産投資を行おうとする方であれば、これまでの内容から、借地権案件にはまだまだ潜在的な魅力が隠されており、投資妙味は十分にあるといえるでしょう。
この意味で“借地権もまだまだ捨てたもんじゃない”と言って良いかと思います。