思わず目を引く価格
物件情報をパラパラとみていると、ときどき「お!?」という価格や利回りに目を引かれることがあります。「都内でも、この築年数でこの価格・利回り!?」と思い、読み進めていると「旧法借地権」「地代○○円/月」という単語が続くことがしばしばあります。
借りるという言葉からくる先入観
借地権と聞くと、所有権ではない…というだけの理由で敬遠し、検討の対象から外す方も少なからずおられるようです。土地を借りて建てる、あるいは借りて建てた建物を買う、いずれにせよこの“借りる”という語感から漠然とした権利の不安定さを感じてしまうのも無理はないでしょう。
ただ、純粋に不動産投資という視点だけで考えてみるとき、この借地権付物件が簡単に間口で切られてしまうほど投資妙味のない案件と言い切れるでしょうか。
この稿では、借地権がどのような権利なのかを明らかにするとともに、対象の物件が借地権付であっても投資対象としては十分魅力的である、というテーマを紹介していきたいと思います。
借地権とその内容
借地権とは“建物の所有を目的とする地上権または土地賃借権”をいいます。
この「建物の所有を目的とする」という点が、単なる民法上の土地の賃貸借契約(および地上権の設定)との決定的な違いであり、特別法である借地借家法(旧借地法を含む)により、一般に弱い立場に置かれがちである借主の保護という理念の下で強化された権利が定められているのです。
この借地権を設定した場合には、借地権者(土地を借りた人)はその土地上に建物を所有することで自由にその土地を使用収益できる一方で、契約内容に基づく地代を負担します。他方、貸主である地主は、借主に使用収益させる分だけ権利を制約された所有権を保有しており(いわゆる底地)、地代や契約更新の際の更新料を受取ることができます。
つまり、借地権の内容として建物を維持し続ける間は、借主には地代・更新料という形で負担が続く事になり、この継続的なコスト負担をまず考える必要があります。
また、借地権が敬遠されやすい理由の一つに、借地上の建物の譲渡や建替えに際して“貸主である地主の承諾を要する”(土地賃借権の場合)という点が挙げられます。
これは賃借権が、債権(人に対する権利)であることから来るやむを得ない制限ですが、将来的に自由な機会での建物売却や建替えが制限される…となると慎重にならざるを得ません。加えて、これらの制限から不動産の担保価値が下がり、融資の障害となる…とまで思い至ると、どうしても投資案件として及び腰になるのも頷けます。
借地権に勝算あるか!?
しかし、投資対象となるかどうかは、ここだけでは判断できないと思いませんか。
純粋に資産形成という枠組みで考えるのであれば、真に投資妙味があるかどうかは、投じた費用と回収費用との相関関係で決まる、ともいえるからです。
そこで、次稿にて①資産価値、②ランニングコスト、③初期費用とキャッシュフロー、の3つの観点から借地権物件を分析し、その魅力に迫っていきたいと思います。