「あの土地もう使ってないし、このまま税金払うだけなら売った方がいいだろうか」
数年前、親戚からこんな相談を受けたときに、心が躍りました。
当時、何か不動産事業を始めたい・・でもいきなり大きな金額を投じるのもなぁ・・というのもあって、不動産関連事業の中でも低リスクの代表例とされる駐車場経営に興味が沸いていた頃でした。
しかし当時、地権者と交渉して土地を賃借して、施設設置業者から見積もりをとって・・なんてバイタリティはなかったものですから、冒頭の相談を受け、「それなら、月極駐車場をやらせてもらえないか」と提案したところ、地代も納税分が補えればいいからなどと、血縁を背景にかなり魅力的な条件で土地を借り受けることができたのです。
早速、雑草を除去し放置されていた不用品を片付け、区画割りを決めてラインを引き・・と、もともと大半がコンクリートの舗装状態になっていたこともあり、作業は軽快に進んでいきました。
コストをできるだけ抑えるため無料で看板を設置してもらえる駐車場仲介事業者をネットで探してお願いし・・とここまでトントン拍子だったのですが、いざ募集を開始した段階で反応薄という見切り発車ゆえの大きな壁にぶつかってしまったのです。
もともと、その場所は人口40万人ほどの市にあって中心市街地にも近い平地という立地でしたし、県道に直接面している土地でしたから、90年代は駐車場用地としての賃貸の申込みも頻繁にあったと聞いており、当初から需要に関しては疑っていなかったというのが実情でした。
ところが、募集開始から最初の半年で問い合わせはわずか2件あまり、最初の契約が決まるまでに約8カ月、賃料も下げるなどしてようやく区画の半分強が埋まり、現在かろうじて黒字を維持してはいるものの、当初夢描いた満車御礼なんて言えるのは一体いつの日のことやら・・・
それにしても昨今の「若者の車離れ」はここまで顕著なのでしょうか。バブルの頃は、デートの必須ツール!とか言われて、車を出せないときなんて肩身の狭さを感じるくらいでしたよね。これも世相だと言われればそうなのかもしれませんが・・
最後に、この御時世でも車なしの生活は考えられないという方は数多いので、駐車場需要の最大ポイントといわれる「立地」を外さない限り、駐車場経営それ自体の可能性はまだまだあると個人的には考えています。
ただ、かつて駐車場需要が高いといわれた土地が、今では区画が埋まるのに数年・・という時代のうつろいを目の当たりにして、一抹の寂しさを覚えたのもまた事実でした。