十五年ほど前に知人から伝え聞いた話の中に、
 「郊外に建てたセカンドハウスに2年訪れていなかったら、その間にホームレスの方が立入って生活しその後そこで亡くなっており・・・嫌な経験をした」
 というとても衝撃的な内容のものがありました。

 もともと別荘という性質上、管理の隙間や長期の不使用状態が生じるのは避けられないにしても、この問題自体は別荘に限ったことではなく、そもそも空き家全般に共通する問題の一例といえますよね。

 そこで今回、空き家問題について、なぜ社会問題にまでなったのか、法律をもってしてまで空き家維持を抑制させたい理由はどこにあるのか(その1)、空き家の維持には今後どんなリスクが生じるのか(その2)、を検証し、空き家問題を具体的にかつ身近にイメージしてみたいと思います。

 なぜ法律による抑止が必要なほど社会問題化したのか?
 

 従来、各地方自治体で「条例」により個別に取り組まれていた空き家問題が、平成27年に空家等対策の推進に関する特別措置法(以下、特措法)が制定されたことで大きな転機を迎えることになります。

 この特措法の目的条項(1条)をひも解いてみると、①周辺生活環境の保全と②活用の促進、の二つの目的が浮かび上がってきます。

 この目的①は、空き家維持から生じる景観の悪化はもとより、不法侵入・不法投棄による治安の悪化、倒壊・火災・害虫の発生等の周辺環境に及ぼす悪影響が想定されています。
 冒頭に紹介した不法侵入事例が典型であるように、空き家が維持されることで生じる防犯・防災・老朽化等の問題が他人にも具体的な影響を与える以上、所有者側が空き家維持も一つの権利だと開き直ることは難しいでしょう。

 対して目的②は、空き家が維持されることでその不動産自体が有効活用されないことにより生じる経済的損失を念頭に置いており、空き家の存在それ自体よりもその経済的不合理を害悪と捉えているわけです。

 しかし、仮に空き家所有者が各々、このような悪影響や機会損失から他人に迷惑を掛けたくないと感じたとしても、先祖代々の持家や思い出の詰まった家屋を現実に処分するかどうかはまた別問題であり、現に老朽化した空き家は全国的に増加の一途・・ここに空き家問題の本質が存在したように思えてくるのです。

 そこで、次稿では、特措法が空き家維持規制としてどのようなリスクを課したかを考えてみることにします。

 
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