賃貸仲介ビジネスは大きく変化しています。賃貸仲介業領域を得意とするコンサルタントの南智仁さんが、賃貸仲介の現場で繰り返される新しい風景を独自の視点で伝えます。

今回は、閑散期の仲介プレイヤーが取り組むべきことについて紹介します。

画像=PIXTA

仲介店舗は、5月のゴールデンウィークから8月のお盆期間頃まで閑散期になる。閑散期は、繁忙期よりも反響数や来店者が大きく減っていく。学生をターゲットにしているとある仲介会社だと、繁忙期の3分の1ほど反響が減少する会社もあるようだ。

もちろん、この時期に溜まりに溜まった有給を消化する仲介店舗の社員も多いだろう。多くの仲介店舗は、この時期は最小人数で店舗をまわしながら、休みを取っていく。しかし、悲しいかな、閑散期でも会社から課せられた予算はある。繁忙期は、覚悟を決めて数字を上げることができるが、この閑散期の時期はなかなかそうしたマインドになりにくい。それなりに高い予算設定をされるとかなり気が重くなるのは致し方ないことかもしれない。

ちなみに私も仲介店舗のスタッフだった時代、この閑散期のフワフワした時期がどうにも嫌で仕方がなかった。やるべきことはあっても、休みに入ると、気持ちが途切れてしまう。とはいえ予算目標もあるが、店舗の人数が少ない。繁忙期のほうが働きやすかったように感じる。

こうした閑散期の時期に諸々の準備を整える仲介会社もある。大きく成長している会社を見ると、この閑散期の時期に様々な施策を実行している会社が非常に多い。よくプロ野球などでいわれる「オフの過ごし方」に非常に近い。本シーズンの結果はオフシーズンの過ごし方による、とはよくいったものだ。今回は、成功している仲介会社が、閑散期の時期にどのようなことをしているのかを紹介していきたい。

人材採用、人材育成に集中

これは多くの仲介会社が認識しているところだが、この閑散期の時期にしっかりと人員の採用と育成を行うことで、繁忙期の成果に繋げることができる。ただ、実際に大半の会社が認識はしているものの、計画的に閑散期に採用活動、育成活動をしている会社は意外と少ない。

とある仲介会社では、採用計画や育成計画をかなり細かく立てていた。単純に採用サイトに掲載するだけではなく、中長期的に人材確保ができるためのブランディング戦略、そして育成計画に関しては、スキルアップ研修からマネジメント検修までカリキュラムを策定し運用する。

実際にどうしても採用計画や育成計画を進めようとしても、短期的な対策である「足りない店舗に人を採用し、配属させる」ということになりがちになる。閑散期を通してしっかりと計画を立てることで、かなり組織的な強さを身につけることができるだろう。

専任物件、管理物件獲得アプローチ

これも多くの不動産会社が考えていることだが、閑散期だからこそオーナーにアプローチをして、管理物件や専任物件を獲得したいところだ。

しかしながら、物件獲得営業を実施するには至らないケースが多いように感じる。理由は、閑散期でもそれなりに仲介の予算があったり、少人数での店舗運営だったりするので、オーナー営業をする時間が確保できないことが理由だ。

確度がわからないオーナーに営業をするよりも、ポータルサイトに新着物件を掲載したほうが短期的な効率が良いのは、間違いない。

しかし、それでも閑散期の物件獲得に成功した事例はいくつもある。とある不動産会社では、閑散期の仲介予算をかなり下げ、物件獲得の目標値をぐっと上げて、行動計画を変えていた。会社のキャッシュフローの問題もあるが、これにより従業員が心置きなくオーナー営業ができるようになった。

実際に、この会社はかなりの管理戸数を増やすことに成功している。

宅建勉強

今更かもしれないが、宅建未取得の20代のかたは、この閑散期にしっかりと勉強して、宅建合格を目指していただくのが良いだろう。もし不動産業界で長く業務を続ける、もしくは独立する、役職を上げていく、という目標がある場合、宅建は必須の資格である。

正直、30代中盤以降は家庭を持ったり、仕事の責任が大きくなったりして、なかなか勉強できる時間がない。20代の未取得者のかたは、この閑散期の時期、特に夏頃から真剣に勉強すれば合格できる可能性はかなり高い。

店舗運営の目線で見ても、宅建を持っている社員がいないことで、運営に支障をきたす事例を多く見てきた。店舗運営としても、個人のキャリアとしても、この時期に宅建の勉強をし(もしくは推奨させ)、宅建を取得することは、大きなメリットになるだろう。

広告戦略の見直し、データ整理

足元の業務においても閑散期にしかできない対応がある。たとえばポータルサイトなどの出稿予算の見直しや集客対策を見直したり、新たな集客導線を検討したりすることもひとつだ。
ずるずると毎年同じ予算で同じ対策を打つよりも諸々検討できるのがこの時期である。

またクラウド上のデータ整理などもこの時期にしておいたほうが良いだろう。気が付かぬうちに店舗のデータ管理が杜撰になっているケースもある。閑散期のうちに、足元のやれることはしっかりとやっておいたほうが良いだろう。

このように閑散期ならではの動き方というものがある。しかしながら、繰り返すようにメンバーはこの時期にしっかりと休みを取らないといけない。上記のような取り組みを行うためには、無理に業務をスタッフに押し付けるのではなく、会社全体で閑散期の業務内容を考えていかなければいけないのだ。

 
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