店舗がパンクして、業務が回せない!繁忙期の仲介店舗共通の悩みとは?

画像=PIXTA

この時期の仲介店舗は、言わずもがな繁忙期真っ只中だ。以前に比べてユーザーの引っ越し時期はそれなりに分散されているものの、それでも1〜3月にお部屋探しのユーザーは集中する。

この時期は、反響数も増加し、売上もそれに比例して増加するいわゆる「掻き入れどき」だ。この時期の売上数字によって、年間の予算目標を達成するかどうかが左右される。そんなまさに「落とせない時期」なのである。

しかし、どの店舗も売上が上がっているからといって何も不安がないわけではない。賃貸仲介店舗には、売上が増加するこの繁忙期特有の頭を悩まされている問題がある。

よく、あまり現場を見ていない経営者や事業責任者は、現場の仲介店舗にこうした疑問を抱く。「反響がとても増加しているのに、そこまで売上が増加してないのはなぜか?」

たしかに、反響が増加すればある程度まで売上は増加するが、反響増加数と売上数字が確実に比例するかといえば、そうともいえないのが現実なのだ。

理由は単純な話である。店舗が忙しすぎて回っていないのだ。ユーザーの内見希望に対して、対応する店舗のスタッフが足りない。反響は爆発的に増えているものの、そのユーザー全てに追客や内見手配ができない。あまりに対応数が多すぎて、現場の業務が回っていないのである。

物販であれば、「売る量」というのは、生産量によって決めることができる。生産量をコントロールするのは難しいが、それでも過去の販売履歴などからある程度生産数をコントロールすることができる。もし仮に何らかの外部要因が重なり、需要が急激に増加した場合に限って、品切れ状態になることがある(一時期のマスクの品切れなどがそうだ)。

また、飲食店であれば、座席数が予め決定されている。人気のある飲食店で、「店がまわらない」というケースはあまりない。単純に店舗の外に並んでもらうか、予約制にしてしまえばよいのだ。

しかし、仲介店舗はなかなかそうはいかない。まず売れる量というものが、決まっていない。「売れるだけ売る」というのが基本的な考えだ。同じ商品がひとつとしてない商品(物件)が無限にあるという特殊な事情がそうさせている。

また予約制にしても、なかなか想定通りにはいかない。ユーザーによって接客対応時間が異なり、スケジュールを組むのが難しいのが現状だ。

もし、仮に反響数が増加したことを理由に完全予約制の仲介店舗にしてしまうと、その仲介店舗は、かなり多くのユーザーを逃してしまうことになる。賃貸仲介は季節的な要因がとても大きい。予約が1カ月後です、と言われてオッケーを出すユーザーはかなり少ないのではないだろうか。

では、こうした状況を防ぐために人をしっかりと採用しておけば良いかと言えば、決してそうではない。仲介店舗を運営する経営者や事業責任者は、こうした繁忙期の反響数に対応できるように完璧にスタッフを揃えることに気後れしてしまう。一番忙しい時期に合わせて、人員を揃えてしまうと、閑散期に人件費コストが回収しきれなくなる。

仲介会社に勤める皆様は、こうした仲介店舗の繁忙期特有の悩みに関して、かなりの割合で共感できるのではないだろうか。

実際、私もこれまで勤めていた企業やご支援させて頂いた企業で、仲介店舗が「パンク」してしまう場面を何度も見てきた。

とある会社では、一台の車(ハイエース)に複数組のユーザーを乗せて、同時に物件案内を行っていた。管理物件中心に紹介していた不動産会社だったから可能な芸当だったが、かなりの無茶だ。

また、とある一階店舗の仲介店舗では、実際に店舗から人が溢れていたこともある。その店舗では、接客チームと内見チームを分けて対応をしていたが、内見の車の帰りを待つユーザーで店舗が溢れ返っていた。

また店舗で複数の顧客を同時接客などもあった。1人のメンバーが3組同時に接客するという具合だ。かなり神経を使ってしまう作業である。

究極は、仲介事業とは別の相談でお伺いした不動産会社で、私自身が急遽、物件紹介(ヒアリング)をしたことである。全営業スタッフが出払い、事務員の方が困り果てていたので、致し方なくユーザーの受付対応を即席で行なった。

こうした話は、長年忙しい仲介会社に勤めているメンバーから際限なく出てくる。個人的には良い思い出だし、時期が経つと笑い話にもなるが、実際に業務を行うと、とんでもなく疲弊してしまう。また機会損失という点では、店舗としては早急に手を入れないといけない課題でもある。なにせ、多くの見込み客を逃している状態なのだ。

とある不動産会社では、繁忙期の時期になると、仲介事業部以外の事業部のメンバーも総出でヘルプに当たっていた。あくまで季節限定ではあるが、それでも繁忙期前にしっかりヘルプメンバーに研修を行い、シフトを組み、準備万端で繁忙期を迎えていた。もちろん、それでも店舗がまわらないこともあるが、かなりユーザー対応ができていた様子である。複数事業展開されている不動産会社は、是非参考にしてみてほしい。

また、とある不動産会社では、内見スタッフをアウトソーシングしていた。閑散期の段階で、しっかりとアウトソース先と打ち合わせを行い、準備を整える。成約率は若干下がるものの、ほとんど全てのユーザー反響対応、接客を行い、機会損失を最小限に抑えることで、うまく繁忙期を乗り越えていた。

おそらく本日もパンクしている不動産仲介店舗は、存在しているだろう。先に述べたように特殊なビジネスであるが故になかなか対策を打つのは難しい。しかし、事前に戦略を立て、用意周到に行うことで、多少のリスクは回避できる。人員不足でなかなか店舗運営がまわせない店舗のかたは、是非、諸々検討してみてほしい。

 
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