不動産会社にとって、「良いお客様」、「好感度の高いお客様」とは?
不動産会社にとって、「良いお客様」、「好感度の高いお客様」とは?
賃貸仲介ビジネスは大きく変化しています。賃貸仲介業領域を得意とするコンサルタントの南智仁さんが、賃貸仲介の現場で繰り返される新しい風景を独自の視点で伝えます。(リビンマガジンBiz編集部)
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不動産会社のかたと会食すると、オフレコの会話として、「かなり厄介だったお客様」のことで話題にのぼることがある。勿論、個人情報にあたる内容をお話しする不動産会社はいらっしゃらないが、「この間ね、」という会話から、なかなか強敵なお客様のお話を聞くことは、多い。強敵の売主、買主、賃貸ユーザー、オーナー。不動産会社で働いているならば、こうしたお客様のイメージをすぐ思い浮かべることができるのではないだろうか。
いっぽうで、その逆である「素晴らしいお客様」のことは、あまり話題にはならない。確かに、かなり厄介な顧客のほうが、記憶には残りやすい。これは不動産業界に限らずそうだろう。
今回は、あまり話題にはならない「良質な顧客」について少しまとめてみたい。
当然のことながら、不動産会社で働いている人々にも感情がある。失礼な態度を取られたら、表情には出さないが、心の中で頭にもくるし、ネガティブな印象をその顧客に対して感じてしまう。
しかし、良質な顧客と出会うと、これとは全く別の感情が生まれてくる。この顧客のために何とかしよう、と考える。できる限り、その顧客が満足してもらうために良いサービスを提供しようとする。当たり前のことかもしれないが、なかなかこうした行動心理は可視化されていないかもしれない。
良質なお部屋探しのユーザーとは?
よく言われることだが、手数料の交渉をされても不動産会社としては、そんなに気が悪くなることはない。正当にユーザーから交渉を求められれば、通常通り対応をする会社が多いのではないだろうか?
ただ、受付段階で手数料の了承をしたにも関わらず、契約直前に手数料の交渉をされるユーザーは、かなり心象が悪い。ユーザーとしては、なかなか言い出しづらい事柄かもしれないが、価格交渉はできるだけ初動のタイミングでされたほうが良いかと感じる。
ちなみに良質なお部屋探しのユーザーとしては、当たり前のことかもしれないが、不動産会社に対して敬語を使い、最低限の礼節があるかたが条件のひとつだろう。いきなりタメ口や失礼な態度をされると、かなり印象が悪い。
また質問内容が簡潔なかたも好まれる。長文で質問を書かれるよりも、簡潔に質問を頂くほうが、不動産会社としてはありがたい。繰り返すが、条件交渉がNGなわけではないのだ。とても感じの良いユーザーには、なるべく真摯に対応しようとする不動産会社が圧倒的に多い。しかし、タメ口や喧嘩腰、まるでディベートのようなメールなどのやり取りは、正直参ってしまう。普通に交渉をすれば丸く治るのに、逆に迷宮入りしてしまうケースが多い。
ちなみに、一度仲介をお手伝いしたユーザーが、再度リピートして部屋探しを依頼されることは、仲介会社にとって至上の喜びである。リピートをして頂くということは、こちら側にある程度の信頼があるということだ。そういった意味では、リピートして頂き、多少の配慮を頂ける部屋探しのユーザーが、良質のユーザーなのかもしれない。
良質な入居者とは?
昔、とある管理会社の役員のかたにこうした質問をされたことがある。
「我々にとって、良質な入居者のかたってどんなかただと思う?」
その役員の答えはこうだった。
「静かに生活して頂いて、毎月家賃をしっかり払ってくれるかただよ。そう考えると、本当に感謝すべき入居者のかたとあまりコミュニケーションを取っていないかもしれないな。けど、それで良いのかもしれない」
感じが良いかもしれないが、とても些細なことでひっきりなしに連絡してくる入居者よりも、静かに生活する入居者が確かに一番良い顧客なのかもしれない。
またクレームや設備の要望に関しては、これは明確に入居者の態度によって、管理会社の対応は変わってしまう。感情の制御ができていない状態での連絡に対しての対応は、かなり厳しい。クレームなどの対応も、入居者から高圧的に話されてしまうと、やはり気が重くなるし、良い感情は抱かない。
そう考えると、部屋探しのユーザーにも言えることだが、良質な入居者というのは、ある一定の節度を保ち、何か問題があっても丁寧に簡潔に説明してくれるユーザーなのかもしれない。
勿論、しっかりと賃料を支払って頂くことも、大前提ではあるのだが。
不動産会社が喜ぶオーナーの特徴とは?
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オーナーに関しては、本当に千差万別だ。とにかく不動産会社を下請けとしてみなし、かなり厳しい要求を突きつけるオーナーもいれば、全く無関心で、ほとんど連絡がつかないオーナーもいたりする。必要以上に細かい報告を求めるオーナーもいれば、度を越した入居者への干渉を行うオーナーもいる。
重要なことは、不動産会社をしっかり「ビジネスパートナー」として認識頂いているオーナーかどうかということがポイントだろう。不動産会社側の報告を聞いて、しっかりと感想をフィードバックしたり、相談事があっても、必要以上に頼りきるわけではなく、適切な相談をするオーナーは不動産会社から、とても好かれる。
実際にクセの強いオーナーの物件に対して、不動産会社がかなり後ろ向きに対応していた現場を何度も見かけた。
いっぽうで、どこの不動産会社でも、「人気のあるオーナー」は存在する。応対が丁寧で、気遣いがある。こちらの業務を配慮してくれる。パートナーとして見てくれている。こうしたオーナーの物件は、不思議なことに、稼働率が高い。
こうして考えてみると、世の中の殆どのかたは、「良質な顧客」の対象なのかもしれない。ある一定の礼節を保って頂き、普通にコミュニケーションができれば、不動産会社としては、有難い顧客なのだろう。
しかしいっぽうで、こうした元来「良質な顧客」だった顧客が、激怒してしまうケースもある。不動産会社側の不誠実な対応などで、堪忍袋の尾が切れてしまうパターンだ。
不動産会社としては、まず「良質な顧客」を「良質な顧客」のまま継続して、お付き合いをしていくということが、サービス向上のための第一歩なのかもしれない。