管理会社からの入居審査結果の連絡が遅すぎて、キャンセルが増えてしまうという悲しい状況
管理会社からの入居審査結果の連絡が遅すぎて、キャンセルが増えてしまうという悲しい状況
画像=写真AC
繁忙期も残すところ、あと僅かだ。都心の仲介会社は、昨年度よりも好調なところが多いようだ。少しマーケットが戻ってきたのかもしれない。しかし、いっぽうで、都心の物件空室数はエリアや価格帯によっては、まだ部屋が残っているようだ。やはり全体として供給過多なのは、間違いない。
さて、私の仲介会社様の業務に関するお手伝いのひとつに、「案件の確認作業」という仕事がある。現在、申し込みをしている案件の進捗状況をスタッフの方と確認する作業だ。たとえば、とある案件は、審査での本人確認が取れず、進捗が動いていないという状態だったとする。そうした場合は、一度、担当スタッフから、ユーザーに一報するように促す、という作業だ。非常にシンプルで、誰でもできる支援なのだが、意外とこうした第三者が案件管理をすることで、申込以降の業務が滞らなくなることが多いのだ。
ちなみに、こうした案件管理を複数社様で実施していると、必ず「進まない案件」というのが出てくる。そしてそれが、同一の「管理会社」の場合が多々あるのだ。
たとえば、申込をしたユーザーが、審査に必要な書類を提出して、管理会社からの返答を待つ場合がそうだ。通常、審査は、4. 5日もあればさすがに合否がわかるのだが、それがなかなか進まない。おそらく「保証会社からの審査結果の回答が来ない」、もしくは、「オーナーの確認が取れていない」という理由が考えられる。しかし、この進捗の滞りが、同じ管理会社で複数件発生していると、やはり何か社内の仕組みが問題で返答が滞っているのでは、と勘繰ってしまう。
また、入居審査は通過しているけど、管理会社から一向に「精算書」が仲介会社に届かないケースもある。「審査通過しました」という仲介会社からユーザーへ伝えたものの、具体的な金額明細が伝えられない。これも、なかなか困った状況なのである。
さらにいえば、契約書類がなかなか発送されない、ということもあったりする。審査は通過、そして精算書で金額の明細も明示された、しかし、肝心の書類が手元に来ない、という場合である。
興味深いのは、こういった事象が管理会社によって、「バラツキ」があることだ。
(スムーズに進む管理会社も当然、圧倒的に多い)
実際のところ、こうしたことが発生してしまうのは、管理会社の社内体制によるところが多い。繁忙期なので、当然のことながら契約案件が増加していく。そして、それらに対応するスタッフの数も限られてくる。また、昨今はなかなか残業や過重労働にも厳しく、なかなかこうした状況で対応していくのは、管理会社にとっては、酷だろう。
管理会社には関係ない余談だが、契約業務がある時期に、一気に滞ってしまう業態がある。それは、社宅代行の会社などがそうだ。社宅代行の会社も、とある時期 (特に3月下旬)に一気に契約業務が集中する。法人社宅を仲介したものの、社宅代行からの連絡がなく、冷や汗をかいた経験のある仲介会社のかたは、たくさんいらっしゃるだろう。
こうした事例を見ると、やはり賃貸仲介は季節商売なのだな、と感じてしまう。
話を戻そう。管理会社のこうした対応の遅れは、先程も述べたように、ある意味、仕方がないかもしれない。忙しいなか、数少ないリソースで業務を回していかなければいけない。また、管理会社の都合ではなく、オーナーや保証会社の都合で、審査が滞ってしまうことも沢山あるだろう。しかしながら、いっぽうで、仲介会社としては、申込をしたユーザーがキャンセルするリスクを懸念しなければいけないことも事実である。
仲介会社としては、申込をした物件の管理会社から、音沙汰が無くなることは、かなり不安である。単純に、「ユーザーが離れないか」が、一番気になるところだ。ユーザーからすると、審査結果というのは、かなり気になるものである。これは、不動産会社が忘れがちなことのひとつである。ユーザーにとって、「審査」というのは、不安だ。決して気持ちの良いものではない。できることなら、早く合否を知りたいものだが、それが何日もかかってしまう。ユーザーからするとだんだんと不安になる。不安がゆえに、再度、アプリで部屋探しをして、「保険」を探そうとする。しかし、いつの間にか、「保険」の部屋探しが、「本気」の部屋探しに変わってしまい、本当に住みたい新しい部屋を見つけてしまい、現在申込をしている部屋をキャンセルする。
こうしたユーザーは、実はかなり多いのではないだろうか。
また審査は通ったものの、その後の手続きの案内や明細が遅いのもユーザーにとって不安である。契約金がいくらで、いつ契約締結をするのかが、明確にわからない。仲介会社に問い合わせしても、「しばらくお待ちください」の一点張り。これも不安要素になるだろう。
興味深いのは、繰り返すが、こうしたリアクションが遅い管理会社は「決まっている」ということだ。複数の仲介会社から、乱暴な言い方をすると、「審査に時間がかかる管理会社」、「対応が遅い管理会社」と認識されるようになる。そうなると、やはりリーシングにも影響が出てしまうのだ。
悲しいのが、こうした現場の状況がありながら、そうした対応が遅い管理会社の役員や責任者は、「リーシングのトレンド」、「DXの革新」などを声高に話すことだ。しかし、実際にやるべきことは、足下にある。まず現場を理解し、早く審査を流す、そして契約手続きをスピーディーにすることだ。何百万円をかけるより、おそらくこれが一番効果的だろう。