寒空の天を仰ぎながら、歯を食いしばる仲介会社の対応5選

画像=写真AC

賃貸仲介ビジネスは大きく変化しています。賃貸仲介業領域を得意とするコンサルタントの南智仁さんが、賃貸仲介の現場で繰り返される新しい風景を独自の視点で伝えます。(リビンマガジンBiz編集部)

少しずつ冬の気配を感じるようになってきた。それと共に仲介業界では繁忙期の足音が近づいてきている。コロナ禍になってから、なんと3回目の繁忙期である。コロナ禍1回目の繁忙期の時、2020年3月から7月ごろの期間、部屋探しの需要は激減した。また去年、2回目の繁忙期の際は、多少の回復は見込まれたものの、完全回復とは言い難かった。

またこの数年で、少しずつユーザーのニーズにこれまでと異なる変化が生まれてきた。さて、今年はどうだろうか?感染者数の変化、それによる社会生活の変化によって、今年の繁忙期が決定されるだろう。これは、なかなか予測しづらいところだ。
 
いずれにしても、寒い時期になってくると、確実に仲介会社の業務は忙しくなってくる。

物件の掲載業務、反響対応、内見、申込手続き、契約業務など。管理物件があれば、ここにオーナー訪問やリーシング対策なども入ってくる。なかなかハードなことは間違いない。

しかし、ただ忙しいだけなら文句はないだろう。仲介業務には、なんともいえない理不尽なクレームなどを耐えないといけないことが多々ある。特に、繁忙期になれば尚更だ。

人間がストレスを感じることは、自分の及ばぬ力で、叱責されたり、責任を追及されたりすることだ。自分の理解できる範囲、また納得できる事柄ならば、いろいろと耐えることができる。しかし、それが理解の範疇外だと、途端にやりきれなくなる。こうしたことが繁忙期に多発する。

では、具体的に紹介していこう。

 ・内見の現地に鍵がない。。

これは本当によくある話だが、内見で物件現地に行った際、鍵がないケースだ。最近は、スマートロックや、内見手配の効率化などにより、こうしたトラブルはかなり減ってきた。しかし、たまにこうしたトラブルが発生する。

経験者は、共感できると思うが、実際に鍵のトラブルに遭遇すると、かなり焦る。またこういう時に限って管理会社が営業時間外だったりもする。  
絶望だ。。

勿論、事情をユーザーに説明するが、ユーザー側としたら、知ったことではない。現地まで行って、部屋を見せなかった不動産会社との烙印を押されるのは、他でもない案内をした仲介会社である。

・タッチの差で2番手。。

物件をおさえようとユーザーから連絡を受け、申込手続きを行ったが、タッチの差で別のユーザーに部屋を取られてしまったケース。これは、当然、誰も悪くない。しかし、悲しいもので、これも仲介会社に矛先が向きがちだ。心の中でこう叫んだことがある営業メンバーは多いだろう「早くしないと、、他の人に取られますよと伝えたのに。。」

・原状復帰工事が進まず、入居日が延長に延長を重ねてしまうケース

退去前に申し込み、また改装前の部屋で内見を実施し、申し込みを獲得した場合、通常は、審査後に入居日の調整を行う。ほとんど入居日に関して、折り合いが悪くなることはないが、なかには、原状復帰工事がなかなかスタートせず、入居起算日が後ろ倒しになることがある。当初、管理会社から、入居可能日を頂いて、ある程度余裕を持たせて起算日を決めるのだが、全く日程が不確定のままで時間が過ぎることがある。

こうした場合、ユーザーの事情が差し迫った理由(入居、転勤 )などで、入居が間に合わないともなれば、かなりのトラブルになる。

こうなってしまうと、損害補償云々の話になることも多い。仲介会社としては、管理会社が提示した入居可能日を伝えただけなのに。。と言いたいところだ。こうした案件に対して、協力的に進められる管理会社もいれば、全く非協力的な管理会社も存在する。握りしめた拳から血が出そうな案件である。

・契約予定者の契約直前の一方的なキャンセル

入居審査を通し、管理会社から契約書類を送って頂く段取りができて、さて、あとは契約というところでのドタキャン。これもかなり厳しいケースだ。勿論、鍵の引き渡しまでしっかりと契約者をフォローしなければいけないという仲介業務の責務もある。とはいえ、年に何度かあり得ないレベルでのドタキャンがあるのも事実だ。こうした予期せぬキャンセルは、おそらく誰も察知することはできないだろう。当然だが、管理会社からは、厳しく叱咤される。致し方ないが、やりきれないといえばやりきれない。

・ユーザーの入居後、まもなく隣人トラブルが発生

これもかなりレアなケースだが、入居後に隣人とのトラブルが発生するケースもやりきれない。隣人のトラブルは、予期せぬものだ。特に管理会社からも仲介会社に伝えにくいものである。たとえば、騒音などは明らかに個人の感覚の問題になってくる。

そうはいえども、入居後、1週間程度で隣人トラブルが発生してしまうと、矛先は仲介会社に向かいがちだ。「なんで言ってくれなかったんですか!」という怒号には、心が折れそうになってしまう。

それでも、管理会社と連携、協力しながら解決していくしかないのである。

以上のように、仲介業務を行っていると、まるで予期せぬ災害に遭ったかのようなトラブルに出会ってしまう。

しかし、当然のことだが、賃貸管理業務も同等、いやこれ以上に様々なトラブルに遭うことがある。なかなか不動産業務というのは、教科書通りにはいかないものなのだ。

ただひとついえることは、それぞれの領域で、それぞれの予期せぬトラブルが発生しているという事実をお互い理解することである。

忙しいかもしれないが、お互いを尊重しながら事業を進めていかなければいけない。

お互いが配慮した対応をして、関係強化になったケースをいくつも見てきた。

是非、この繁忙期は、活気ある繁忙期になってほしい。

 
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