カオス状態は、カオスマップだけではなく、仲介業務もカオス状態だった件
カオス状態は、カオスマップだけではなく、仲介業務もカオス状態だった件
賃貸仲介ビジネスは大きく変化しています。賃貸仲介業領域を得意とするコンサルタントの南智仁さんが、賃貸仲介の現場で繰り返される新しい風景を独自の視点で伝えます。(リビンマガジンBiz編集部)
私は仕事柄、不動産会社様の経営戦略の支援をすることが多いが、なかには現場にどっぷり入って支援をすることもある。ユーザーのヒアリングから、契約手続きまで、実際の現場に入り込む。
仲介の現場を見ると、なかなか机上ではわからない現場の課題が良く見えてくる。また、「机上の空論」になるであろう最近の新規サービスもわかるようになる。不動産会社向けのサービスは、何といっても現場で使ってもらってナンボの世界である。現場で使える、使えないという判断は、当然現場に身を投じていると瞬時に判断できる。いくら崇高な理念を掲げても、それを使うプレイヤーにそっぽを向かれたら何の意味もない。そう考えると、実際のリアルな不動産業務の現場に身を置くというのは、多くの課題を見出せることができるという意味において、非常に貴重な経験である。
また、当然のことながら、現場を見ていると、不動産業務の進化を実感することが多い。数年前と比べて、賃貸仲介現場、賃貸管理現場は大きく変わった。何が変わったかと言えば、とにかく不動産業界の「不」の大きな部分を占める「FAX」を使う機会が圧倒的に減った。仮にFAXでやり取りをしても、多くの会社がE-faxなどで対応をしている。もっと突っ込んで言えば、コピー機を使うことが、かなり少なくなったような気がする。
また、管理会社と仲介会社のやり取りも、チャットやメールが一般的になりつつある。これは、コロナ禍におけるリモートワークの推進が一役買っているのではないだろうか。コロナ前は、ここまで不動産会社間のやり取りが、WEB上で行われることはなかった。今、大きく不動産仲介業務は大きく変化していると身に染みて感じている。
ところで、話は変わるが、年に2回、不動産テック協会様から不動産テックカオスマップなるものが発行されている。私も毎回、興味を持って見させて頂いている。
ちなみに、このカオスマップを見て、まず思うのは、単純に「本当に不動産テック系の企業が増えたな」、というところである。誰もが知っている企業様もあれば、お付き合いのある企業様もあり、全く存じない企業様も掲載されている。ひとつ言えるのは、「不動産テック」というジャンルが、かなり市場にも浸透し、新規参入企業が増えていることは間違いない。このマップの掲載基準や整合性は、さておき、「不動産テック系の企業の総数はカオスのように増えてきている」ことは、このマップを見れば一目瞭然だ。
仲介業務を助ける便利なツールも多すぎるとカオス
さて、話を不動産仲介現場の話に戻そう。
賃貸仲介現場では、申込手続きをする際、つまり部屋をおさえる際に、これまでは管理会社から申込書をFAXで受信し、申込者に記載して頂いて、それを管理会社にFAXで返信していた。この手続きだけで、1時間程度要する。また、この手続きがあるが故に、不動産店舗までユーザーは、赴かないといけなかった。
しかし、今や多くの管理会社が、業界向けの申込システムを利用するようになった。これは本当に便利なものだし、本当に業務の大きな革新だろう。ユーザーに入力フォームをショートメールやEメールで送信して終了、である。これなら不動産店舗にユーザーが伺う必要もない。また、そのシステムを利用して、管理会社とチャットでやりとりも可能である。全くもって便利以外の何ものでもない。
しかし、ここにひとつ大きな落とし穴があり、今、仲介現場はなかなかのカオスの状況になっていることは、意外と知られていない。
まず、申込システムがいくつもあり、管理会社によって使用している申込システムが異なる。とある管理会社は、Aというシステムを、また別の管理会社はBというシステムを、というように、仲介会社は、申込みをしている物件の管理会社のシステムを全て確認していかなければならない。
このような手間を防ぐために、メール通知機能を付け、なるべく仲介担当者に周知できるようにどのシステムも考慮しているが、なかなかそれだけでは一筋縄ではいかない。いきなり使用しているシステムを使わずに、電話での対応に移行する管理会社や、チャットでの対応が途中からメールの対応に変更になったりと、管理会社によってそのシステムの活用方法も異なっている。
支援をさせて頂いている仲介現場を見ていると、まさにこの申し込みから契約の手続きのやり取りが「カオス」以外の何者でもないことに気付く。
仲介の現場スタッフは、Aのシステムを見て、チャットを返信し、Bのシステムで賃料起算日の交渉を別の管理会社と行い、同時にAのシステムを利用しているが、途中から電話対応に移行しているaという管理会社から必要審査の連絡を受け、さらに旧態依然のFAXで地場の管理会社に申込書をFAXする。
。。まさに、カオスだ。
おそらく賃貸仲介事業に新規参入してきた不動産会社様にとっては、本当にわけがわからない世界だろう。長くこの業務を行なっている熟年のスタッフも、今や管理会社のシステムに対応するのにかなり苦労しているようだ。いずれにしても、現場がかなりのカオスになっていることは間違いない。
希望的観測としては、こうしたシステムが統一されるのがベストな未来だろう。
しかし、まず仲介会社としては、このカオスな状態で、それぞれのシステムを使いこなさなければならないし、それぞれの管理会社の「やり方」を理解しなければならない。
システムを見落として、返信を怠り、申込をした部屋をキャンセルされそうになった経験は、多くの仲介会社で経験している筈だ。
管理会社の契約手続きの方法を把握し、一覧化すること、まずこのあたりが仲介の圧倒的な生産性向上に繋がる。
明るい未来を夢見ながら、とにかく今はカオスの海を泳ぎ続けなければならないのだ。