管理人さんを侮るなかれ
管理人さんを侮るなかれ
賃貸仲介ビジネスは大きく変化しています。賃貸仲介業領域を得意とするコンサルタントの南智仁さんが、賃貸仲介の現場で繰り返される新しい風景を独自の視点で伝えます。(リビンマガジンBiz編集部)
睡眠中に勝手に入出してくる管理人
分譲マンションであれ、賃貸マンションであれ、集合住宅には管理人が常駐するものがある。いっぽうで、管理状況によっては、巡回管理で管理会社が物件を定期的に見回るケースもあるし、家主自身が管理するケースもある。マンションにはさまざまな管理形態があることは、皆さんご存知だろう。
実際、自分が入居するマンションに管理人がいると、安心できる。何より、マンションに管理人が常駐していると、物件の美観が圧倒的に保たれる。これは本当に如実に違いがわかる。また、当然、防犯面でもおおいにメリットがある。管理人がいるだけで、犯罪者は警戒するだろう。そう考えると、管理人さんのメリットは、いろいろあるのだ。
とはいえ、最近では、管理人さんを常駐させると、なにかとコストが発生する。定期巡回で、まとめて他のマンションと共に行うことで、コストが抑えられることも事実である。
以下のいくつかの話は、あくまで特殊なケースだと信じている。しかし実際、私や知り合いが経験した話である。世の中の99%の管理人さんは、善良なかたが多いが、そうではないケースもほんの少しあるのだ。
随分前に、とある女子学生限定専門マンションに管理人さんが常駐していた。
女子学生マンションというのは、その響きだけでも、セキュリティを強化しなければいけない印象だし、実際そうである。しかも、その物件は、学校の近くにあった。当然、男子学生は、その管理人の目を盗んで、その物件に住んでいる彼女の部屋に入ろうとする。なかなかスリリングな展開だ。
当然、管理人としては、警戒を強めるわけだが、その「強め方」が今考えてみても、常軌を逸していた。女子学生の部屋の出入り時間のメモ。監視カメラの観測。ゴミ袋の中身の確認。たしかに強烈なセキュリティだが、とうの入居者からすれば、たまったものではない。24時間、管理人に見張られている恐怖ゆえか、その物件の多くの女性入居者たちは、かなり短期間で退去していた。
また、昔、私が住んでいたマンションもかなりパンチの効いた管理人がいた。当時、新規室内設備(たしか洗濯機置き場設置)のための部屋の点検確認があった。通常なら、マンションの掲示板に点検日のお知らせや、メールボックスに案内が入っているのだが、いきなり管理人と業者さんが、鍵を開けて入ってきた。朝の8時半ごろである。私は寝ていた。うつら、うつらしている私を起こしもせず、管理人さんは部屋に入って、いきなり業者さんと打ち合わせを部屋の中で始めた。寝てる自分、我関せずで部屋のなかで打ち合わせを行う管理人。シュールな展開だ。
「俺に、いくら寄越すんや?」 仲介会社にだけ態度が豹変
またこんなケースもあった。10年以上前のことだが、とある分譲マンションの保有者から、当該物件を賃貸募集したい、と依頼を受けた。物件調査のため、私はオーナーと共に、そのマンションの内見に向かった。入り口のエントランスに管理人がいた。人の良さそうなお爺さんだ。ニコニコして、この物件の良さを私に話してくれた。
「内見は、この管理人さんに鍵を預けておくので、連絡を取り合って欲しい」オーナーは、私にそう言った。
しばらくして、その物件にユーザーから問い合わせがあり、内見をすることになった。私は、管理人に電話をかけた。そうすると、態度が一変。
「お前、俺の仕事を増やすなよ!」
第一声がこれである。
「俺に、いくら寄越すんや?」
態度が豹変していた。オーナーの前ではニコニコ、対仲介会社には高圧的(ほとんど強要)の態度である。
当然、私は管理組合、管理会社に連絡をして、その旨を伝えた。その後、その管理人がどうなったのかは、わからない。
また最近、仲介会社のかたからこんな話しを聞いた。
管理会社に内見を手配した。内見するには、管理室にいる管理人さんを呼び出して、内見をお願いしてほしい、とのことだ。こうしたケースは、一般的ではないものの、なくはない。
時間通りに、お客さんと現地に着いたら、管理人さんはこう言った。「仲介会社はそこで待っていて。私が案内するから」仲介会社からすれば、営業ができない。ましてや、室内での会話も把握できない。強くその仲介担当者も同席できるように要望してみたが、取り合ってくれなかったらしい。
ほとんど全ての管理人のかたは、物件価値を維持して頂くために、いろいろと好意的にご協力をしてくれる。感じの良いかたがほとんどだ。
しかしなかには、こちらの想像を超える対応する人たちもいる。オーナーや管理組合、管理会社には、平身低頭でも、周辺業者とわかった瞬間に態度を豹変させる人たちがいるのも事実だ。
結局のところ、こうしたことを経験した仲介会社は、なるべくこうした物件を紹介することを敬遠したくなる。部屋探しのユーザーには、なるべく平和に普通に生活をして欲しい。また内見なども、こうしたトラブルになる可能性のある物件は、紹介を避ける。
あまり大きな声では言えないが、管理人さんが「天下」のような物件は、意外と存在しているのだ。管理会社もなかなか注意しにくい。そうすると、管理人独自の奇妙なルールが、そのマンションで生まれていく。
ほとんど問題ないと思うが、管理会社は、改めて今、お願いをしている管理人さんの状況を確認しても良いかもしれない。オモテの顔ではない部分が垣間見えた場合は、要注意である。