なかなかオモテでは言えない仲介会社が敬遠しがちな管理会社とは?

賃貸仲介ビジネスは大きく変化しています。賃貸仲介業領域を得意とするコンサルタントの南智仁さんが、賃貸仲介の現場で繰り返される新しい風景を独自の視点で伝えます。(リビンマガジンBiz編集部)

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管理と仲介の微妙な関係

物件管理を行なっている不動産会社では、満室にするために様々な対策を打つ。オーナーへの設備導入の提案や値交渉、自社でリーシングを行うための広告掲載、そして仲介会社への客付営業などがそうだ。やはり、オーナーにとって嬉しいのは、「物件の空室がない」ことが、何よりも嬉しいのだ。そのために、管理会社は労を惜しまない。

また、いっぽうで仲介会社は、このような管理会社とうまく付き合いたいと願っている。管理会社との関係が良好の場合、仲介事業において、多くのメリットが享受できる。たとえば、優先的に管理会社の物件の広告掲載ができたり、契約手続きなどでストレスレスなコミュニケーションを取ることができたりする。こうした管理会社との良好な関係を築くことは、仲介業務を行ううえで、生産性の向上に大きく寄与することができる。

しかし、いっぽうで、管理会社の対応に対して、仲介会社がそれなりのストレスを抱えていることも事実だ。(勿論、その逆もある)

そしてそれは、悲しいことに管理会社には殆ど共有されていないのが実情である。

仲介会社がやらかすと「取り中」にされる

話は変わるが、不動産業界では、「取り中」(とりちゅう)という言葉がある。つまり出入り禁止、ということだ。これは、不動産取引において大きなトラブルを一方の会社が起こしてしまい、関係性が悪化した場合、その被害を受けた会社が、相手方の会社と取引を行わないと決定することである。

たとえば、仲介会社が紹介した入居者の情報に虚偽があり、それを管理会社が仲介会社に問い合わせてみたが、その返答内容が不誠実だった場合、管理会社が仲介会社を取引停止にするパターンなどがそうである。

またこういった例もある。とある管理会社の物件を仲介会社が申込みをしたが、申込みをして数日経過した時期から仲介会社の担当と連絡がつきにくくなり、ついには音信不通になってしまう。そうすると、不本意ながら何日もその部屋は募集停止状態となってしまう。ようやく連絡が仲介会社から連絡が来たと思ったら、キャンセルの連絡だった。こうした場合なども、管理会社が仲介会社を取り中になる一例であろう。

いずれにしても管理会社としては、こうしたケースはたまったものではない。特定の仲介会社を取引停止にしていくのは、納得のいくものなのかもしれない。

このように不動産賃貸業界では、管理会社から仲介会社に「取り中」を言い渡すケースがほとんどだ。管理会社からすれば、星の数ほど仲介会社は多くある。不誠実な対応で、空室リスクが生まれたり、入居者との契約内容などで齟齬が生まれたりするぐらいなら、わざわざ取引する必要はないだろう。

では、仲介会社から管理会社を「取り中」にするケースはあるか。おそらく皆無に近いだろう。なにせ、物件を紹介できなければ、仲介会社としては、死活問題だ。前述したようになるべく管理会社とは、良好な関係を築きたいのが仲介会社の本音である。

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仲介会社にとってもNGな管理会社がたくさんある

しかし、実際のところ、仲介の現場レベルではどうだろうか?実際の現場では、「取引停止」とまではいかないが、「なるべく紹介したくない管理会社」が存在しているのも事実である。

以下は、実際、仲介の現場でよく聞かれる話だ。勿論、担当者ベースの話であり、「仲介会社の方針として」ということではない。しかしながら、仲介業務というものは、かなり今でも現場の依存度が高い。業界にいる現場の仲介従事者の全員からそっぽを向かれたら、その管理会社のリーシングはかなり悲惨な状態になるだろう。

・常に「タメ口」の管理会社の窓口対応

 (とある仲介会社の現場の声、その1)

 空室確認の際に、常にタメ口で話す管理会社の担当者がいます。そうした管理会社の物件を申し込んだら最悪です。契約、引渡しの手続きの流れを全部上から目線、タメ口で指示され、まるで下請けの扱いです。同じ業界なのに、何故こんなに上から指示されないといけないのでしょうか。こうした管理会社の物件は、意図的に紹介しないようにしていますね。

・図面がレインズ、業者間サイトに掲載されていない、かつ、ファックスで図面取り寄せをお願いしても送ってこない

 (とある仲介会社の現場の声、その2)

 とにかく物件の図面が取得しにくい管理会社があります。レインズにも図面がなく、業者間サイトにもない。電話を何度しても送って来てくれない。これだと取引する、しないというより、そもそも物件の紹介ができません。こうした物件を店頭でお客様に紹介しようとした場合、ずっとお客様をお待たせすることになります。機会損失ですよね。

 こうしたことを防ぐために、このような管理会社の物件は、なるべく紹介しないようにしています。

・内見時に事務所までの鍵を取りにいかなければならない

 (とある仲介会社の現場の声、その3)

 今は多くの管理会社さんが、現地対応の案内ができるように鍵の現地設置をされています。また、スマート内覧のように、最先端のツールを導入している管理会社さんもいます。しかし、なかには、まだ管理会社さんの事務所に鍵を取りにいかないといけないこともあります。勿論、物件の近くに事務所があれば問題ないのですが、物件と全く離れた場所の事務所だと、それだけで辟易としてしまいます。鍵を取りに行って、内見をして、さらにその返却に行くと、酷いケースだと半日がかりになってしまいます。こうした管理会社は、あまり積極的に紹介したくはないですね。。

・完全土日休業の管理会社

(とある仲介会社の現場の声、その4)

  当然、土日が、紹介業務のメインの日になるのですが、そもそも土日、コールセンターにも繋がらなく完全に休業されている管理会社がいらっしゃいます。さすがに、土日休みだと、僕たちも紹介する時に腰が引けてしまいます。土日の紹介時点で、その物件が募集中なのかも、わからない。仮に募集中でも、内見は平日になる。そうすると、お客さんの都合が合わない。こうした物件は、紹介したくてもできません。無意識に土日完全休業の管理会社さんは、紹介しないようにしています。

仲介会社の現場のかたたちと話をしていると、こうした話を頻繁に聞く。まだ書ききれないぐらいだ。

今や、様々なDXツールを導入する管理会社も増えてきた。こうしたツールは、管理会社の業務効率の向上とともに、仲介会社の業務効率にも大きく寄与されている。しかし、いまだになかなかそうしたツール導入に後ろ向きな管理会社も多い。仲介会社としても、なるべくスムーズに紹介したいのだが、最近では、こうしたツールを導入しないことが、管理会社のリーシングの足かせになっていることも懸念される。手続きが、あまりにもアナログな場合、仲介会社はその管理会社の物件紹介を敬遠しがちになっているのだ。

また、礼節を欠いた不誠実な管理会社の対応なども、仲介の現場のメンバーは、かなり細かく見ている。こうしたことは、目に見えないところだが、ボディブローのようにリーシングに悪影響を与えていく。気持ちの良い仕事ができなく、気分が悪くなるぐらいなら紹介を控えるということは、ある意味当然のことかもしれない。(勿論、これも逆のケースが多くあるが。。)

仲介会社へのリーシングに比重を置いている管理会社は、「物件リーシングの促進」として仲介会社の対応方法などを今いちど見直してみても良いかもしれない。

きちんとした誠実な対応をすることで、仲介会社の物件問い合わせが増えたり、ツールを導入することで、仲介会社の内見希望件数が増えたりすることは、良く聞かれることだ。意外と手を入れるところは、足元の基本的なところなのかもしれない。

 
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