はじめまして。明海大学不動産学部4年の大原悠と塩島主也です。私たちは、2017年度兼重賢太郎先生のゼミで不動産学の研究を行いました。
私たちのゼミでは、前期には専門書の講読を、後期には不動産学に関して各自が研究テーマを設定し、プレゼンテーションを行うとともに、レポートをとりまとめました。以下、大原がゼミ活動の全般を、塩島が自分自身の研究テーマを、それぞれご紹介いたします。
ゼミ活動全般について
前期の専門書の講読では、野澤千絵著『老いる家 崩れる街:住宅過剰社会の末路』(講談社、2016年)を選び、各自担当する章を読み、解説を行いました。その際、スライドやレジュメなど、各々資料を作成し発表を行いました。
この本では、人口が減少する日本において、新築住宅の建設が進められている問題について、国土交通省などのデータや文献、地域の実態に基づき、言及しています。著者によれば、現状のまま推移すると、空き家の増加や将来的な若い世代の負担の増大が懸念されるとともに、問題の原因として都市計画、特に建築に対する規制の緩さが指摘されています。このような著者の指摘について、各自調査をして、意見を出し合いました。
例えば、郊外に新築住宅がつくり続けられるまちとして川越市の郊外の問題について話し合いました。川越市では、多額の税金を投入して整備をしてきた中心市街地やニュータウンの人口は減少している一方で、郊外の農地などが無秩序に宅地化されているという問題を抱えており、この問題への対処について、全員で議論しました。この回の議論としては、郊外の不便さより、家の広さや不動産価格の安さを重視する現代の消費者ニーズと、都市計画の見直しや再度多額の税金をかけなければならないという政策的展開とのバランスをどうとるのか、ということが論点として浮かび上がりました。
後期では、各自が関心を持っているテーマを出し合い、そのことについて議論を行いました。1人が3テーマほど発表し、2つは簡単なプレゼンテーションを行い、最後に1年間のゼミ活動を通した成果物を発表し、議論しました。私は、震災の影響などを考え、どこに不動産を購入するかというテーマを設定し、特定の震度以上の地震が起きた地域と回数、2次災害の影響、想定される問題などを調べ、発表しました。
兼重ゼミでは学生一人ひとりが日本の不動産の問題についてテーマを設定し、それについて議論を行っています。不動産について学ぶだけでなく、プレゼンテーション能力や思考力が身につきます。高等学校までとは違い、学生の主体的な取り組みを促し、各自それぞれの視点からの問題提起や議論を行っています。文章にすると大変そうだと思われるかもしれませんが、兼重ゼミはとても優しく意義のある場を設けてくれる楽しいゼミだと感じています。
ゼミの成果の紹介
私たちのゼミでは、後期に、不動産に関することで興味を持った地域について実際に足を運びそこで調べたことをレポートしてまとめる活動をしました。私、塩島は、武家の古都鎌倉の昔の土地の利用方法について、現地を実際に歩いて不動産学的視点を持って調べました。以下、その内容を簡単にご紹介いたします。
約800年前には10万人が生活していたと言われている鎌倉。10万人が生活するには、土地を上手く使う知恵と工夫が必要でした。鎌倉は、標高の低い山に囲まれており「谷(やつ)」と言われる地域が沢山あります。昔の人々はその部分を上手く使っていたそうです。
例えば、勾配のある部分は階段状に切土をすることで平地を作り利用していきました。そういった土地は、盛土をしていった土地よりも地盤的に安定しており人々が利用する土地としては、比較的安全で山全体を切り崩すより効率良く開発していけます。実際に切り開いた土地に足を運んでみると比較的広く、重機などがない時代に山を人力で切り崩していったことを考えると驚きました。こうして切り開かれた土地は、様々な利用方法がある土地として生まれ変わったのであろうと考えられます。
昔も現代も人々は限られた土地をどのように使いやすくするかを考えて開発しています。現代よりも限られた方法で課題を解決するために昔の人たちが持っているノウハウを駆使して解決していった跡は私たちの身近に意外と残っているものです。