はじめまして。明海大学不動産学部3年の田中幸之介です。
私が所属している大杉麻美教授のゼミでは、「家族と財産の法」というテーマで、不動産に関する相続トラブルと解決策について学んでいます。今回は、ゼミで私が発表をしたテーマについて紹介いたします。
「相続財産承継」について
さて、今回は私が所属している大杉麻美ゼミの取り組みについてご紹介をさせて頂きます。
ゼミでは、主に不動産に関する相続について学んでいます。近年、家庭裁判所などで争われている「遺産分割審判」等の件数は年々増加傾向にあり、10年間で2倍以上増加したと言われているほどです。遺産相続は誰にでも起こりうる可能性があります。ゼミで私が取り組んでいる内容の一端を紹介することで、不動産学部で私たちが取り組んでいる内容を読者の皆様に知っていただければと思います。
祭祀財産とは
ところで、民法第897条は、「系譜、祭具及び墳墓の所有権は…慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が継承する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する」と規定しています。「系譜、祭具及び墳墓」というのは、「祭祀財産」と呼ばれます。具体的には、家系図・過去帳・位牌・仏壇・墓地等のことを指すのです。「系譜、祭具及び墳墓」は、財産で、所有権の対象であると規定されています。
このような「祭祀財産」は「相続人の共有に属する」というわけにはいかないようです。祭祀財産の所有権は、「慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者」「被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者」が承継すると、民法897条に規定されています。
「祖先の祭祀を主宰すべき者」とは?
発表の時に疑問に思ったのは、「祖先の祭祀を主宰すべき者」とは一体誰のことなのか、ということです。「祖先の祭祀を主宰すべき者」は、「祭祀主宰者」と呼ばれます。祭祀主宰者は、被相続人が指定するか、あるいは慣習によって決定されるようです。
被相続人が指定するというのは、なんとなくわかるような気がしますが、「慣習によって決定される」というのは、難しいなと思いました。「慣習」がはっきりしなければ、承継する人も決まらないように思います。民法897条2項では、慣習が明らかでなく、祭祀主宰者を決めることができない場合には、家庭裁判所が定めるとされているそうです。
実際の裁判例では、誰が祭祀主宰者になるかで、争われる事例もあるそうです。例えば、東京家審判平成19年10月31日(家裁月報60巻4号77頁)では、亡くなった父親の会社を相続した長男と、高齢の妻が、自らを祭祀承継者と指定してほしいことを求めました。長男は父親の葬儀で喪主をつとめたことから、自らが祭祀主宰者であると主張しましたが、被相続人の死亡後、位牌等はすべて妻が管理していること、祭祀を主宰する意思が堅いことから、妻が承継者として最も適任であると認めました。他にも、判例では、長い間共同生活を送ってきた内縁配偶者が祭祀主宰者になった事例もあると学びました。
おわりに
亡くなった方を祀るための家系図・過去帳・位牌・仏壇・墓地等については、通常の相続とは異なる決まりがあることが分かりました。家族で所有権をめぐって争っているのです。
相続というのは、誰にでも起こる事態であり、また学生である私にも起こりうる事態です。相続をより深く勉強することで、将来に起こりうる様々な事態に適応することのできる能力を養っていきたいと思います。