夏の疲れが出やすいこの時期、お元気ですか?明海大学不動産学部で「環境法」「都市環境と防災」を担当している本間です。

今回は、不動産の実務と科学の接点についてです。

不動産の目利き

私は過去に不動産実務の一部分(営業・広告制作・広報宣伝・開発企画)を経験しております。その当時、大変お世話になった会社の上司から教育されたことは、「不動産には顔がある」ということでした。大学院で不動産科学を専攻した新卒の経験則の無い私を前に、「学校じゃ教わらないだろ?」と苦笑いして言われました。

その上司は、物件情報(いわゆる、マイソク)を見て、即座に事業見込みがある物件かどうかを的確に判断できました。その際に言われた言葉です。

その後、私は企業人や研究者の立場で約20年間土地と建物を見てきましたが、先人の指導のおかげでまだまだ途上ではありますが、今では随分目利きができるようになり、当時の上司が言った意味がよく理解できるようになりました。

不動産は目に見えない

不動産は目に見えないものがほとんどです。利害関係者の喜怒哀楽や権利形態は勿論のこと、家の躯体の中とか、土地の深部など、見えないものだらけです。不動産に関わる事件も、この見えない性質を悪用したものがほとんどであり、昔からその物語のような実話は、まるでドラマの演出のような内容がたくさんあります。たくさんの事例を見聞きしたり、接したりしなければ、これらのからくりを理解することはできません。

不動産の目利きと科学

不動産科学を扱う大学では、それらが見える能力を少しでも身につけられるような幅広い教育や研究をしています。

売れる、売れない、貸せる、貸せない、などの見極めは現状、実務経験則が大きいようです。その経験則を科学で分析することも不動産学者の研究対象です。また、それ以外の部分(例えば、物性や環境)については、科学を活用した方がより真実性が増します。不動産の科学は、古くからある伝統的な学問(例えば、経済学、法学、工学、地理学、地質学など)の研究成果を活用します。

しかし、それだけでは不十分です。多面的な検討が重要であり、ものの見方も大きく異なります。海外では、不動産科学は英米を中心に経営学修士(MBA)課程などの専攻でも多く存在します。経営者に必要とされる幅広い見識が身につくうえでも、不動産科学は重要な知識といえるでしょう。

高校からすぐに大学へ進学した若者は経験則がありません。しかし、科学の側面は理解することができます。不動産の科学を知ることは、不動産の実務を理解するうえでも、より論理的に検討することができます。その後、経験則を身につけていく過程で顧客からの信頼を得ることもできるでしょう。

その逆で、経験則をたくさんお持ちの方も、科学を知ることにより、さらに新しいものが生まれたり、お持ちの経験則を更に深いものとしたりすることもあるでしょう。

学生は多種多彩

これまで、過去にあった夜間部も含め5,000名超の学生が不動産学部で学びました。現在は、大学院(昼夜開講制)の学生は不動産関係、行政関係などの実務家が多いですが、学部教育は高校から進学した若い学生は勿論、街の不動産屋さん、会社の社長さん、定年退職した方、海外からの留学生などもいます。

高校から進学した学生は、全く不動産とは無縁だが興味があって入学した学生、親が地主や不動産業で跡取りを念頭に入学した学生など、その背景は多種多彩です。

土地環境を扱う私のゼミ(3年次)では、自然エネルギーや土壌環境、環境まちづくりをテーマとして取り組んできました。前期は当番を決め、工学、法学といった伝統学問からアプローチした自主学習をレポート報告形式で行い、ゼミ生全員が徹底的に学習します。テーマに沿ってテクニカルなことや歴史や法政策を学びます。

知識を付けた状態で、夏休みはテーマに沿った現場見学を行います。その理由は、知識がたくさんついた状態で見学した方が、学びの相乗効果が期待できるからです。

土壌汚染の地下水流動模型実験で座学の確認(協力:千葉県)

ゼミ研究活動報告書は学生の学びの証し

大学で生涯学習

明海大学不動産学部には、高校からすぐに大学へ進学する若い学生も多数いますが、経験則をたくさんお持ちの60代、70代の現役学生が混ざっていることがその特徴かもしれません。

人生は生涯学習です。老若男女問わず、大学で私たち教員と一緒に不動産の科学を考えましょう。

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最後までご覧下さり、誠にありがとうございました。
もしよろしければ、不動産学部のホームページもぜひご覧下さい!
 
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