こんにちは。スポーツ科学(医学)を専門に教育・研究を行なっている杉浦雄策です。
不動産学部に所属していますが、一般教養科目を担当する教員です
不動産学部では異色の教員ですが、学部設立当時(1992年)から在職しています。
スポーツ科学(医学)と不動産学のコラボレーションを目指して
私はこれまで、トップアスリートを対象とした競技力向上のための研究をしてきました。しかし、最近は「スポーツによって、多くの人々の健康づくりが継続される策(システムづくり)」にもトライしています。
私自身は、不動産学の専門家ではありませんが、不動産学部に身を置く教員として、スポーツ科学(医学)と不動産学が連携する学際的な研究を進めています。
そして、「医学とスポーツをコアにした疾病・傷害予防のためのシステム」を不動産学とコラボレーションし、スポーツを通じて、人々の生き方が豊かになる都市(まち)や社会の実現に貢献したいと考えています。
2020年に東京でオリンピックが開催
さて、2020年に、東京でオリンピックが開催されます。3年後の夏、「あなたは、何をしていますか?」。
今回は、オリンピック開催が創出するレガシー(遺産)について、話題を提供したいと思います。
オリンピック・レガシーとは?
IOC(国際オリンピック委員会)は、オリンピック・レガシーを「長期にわたる、特にポジティブな影響」としています。近年、オリンピックを単なる大きなスポーツイベントとしてとらえるだけでなく、オリンピックが開催都市・国に何を遺せるかに注力しています。
オリンピック・レガシーは、スポーツ、社会、環境、都市、経済の5つの視点から分類されています。
社会、環境、都市、経済の成長・発展を担う”不動産学”は、オリンピック・レガシーに深く関わることになります。
オリンピック・レガシー
1964東京オリンピックが創出したレガシー
東京大会の開催は、東海道新幹線の開通、高速道路の整備によって大量・高速輸送を可能にし、その他多くのインフラ(社会基盤)も整備されました。近代化された東京は、街並みをガラリと変え、利便性の高い都市へと変貌しました。経済は成長し、国民の生活そのものを大きく変えたのです。
さらには、日常でスポーツをすることの楽しさや重要性を国民が実感し、その後のスポーツ振興に寄与したのです。体力の向上が、心身ともに健康で活気のある社会を営むために必要であることを国民に知ってもらう契機となりました。
オリンピック・レガシーキューブとは?
スポーツ、社会、環境、都市、経済は、オリンピック・レガシーがもつ要素のそれぞれ一領域であり、それらの領域が相互に関係しています。そのためレガシーの創出に対して、より広い視点をもたなければなりません。
レガシーの内容が、①ポジティブかネガティブか、②有形か無形か、③計画(的)か無計画(的)か、に区分されます。
これら①、②、③から構成される立方体は、「オリンピック・レガシーキューブ」と呼ばれています。レガシーは、ポジィティブな領域を最大化し、ネガティブな領域を最小化して、準備しなければならないのです。
8個のキューブのなかで、「ポジィティブで、有形で、計画的な」領域(青色)に議論が焦点化し、残りの7個には、あまり関心が向けられていません。もっと包括的な(スポーツ、社会、環境、都市、経済)視点で、レガシーをプランニングすることが必要となります。
オリンピック・レガシーキューブ
オリンピック開催を都市変革のチャンスに
わが国は、少子高齢化、医療費増大、健康寿命問題などの課題をどのように解決しいくかが問われています。スポーツには、これらの課題を解決し、豊かな社会をつくる力があります。
一つの専門領域からの議論ではなく、さまざまな領域(学際的)からの複合的な対策(しかも、イノベーション的な発想で!)を講じることができれば、オリンピック開催を契機に、人々の生き方を豊かにして、都市を変えていくことができるでしょう。
スポーツを楽しむライフスタイルの確立(健康・行動科学)を、スポーツをするコミュニティの創出(社会学)を、地域の特色を活かした居住環境の整備(不動産学)をプランニングすることで、住むほど、暮らすほど、訪れるほどに、人がバイタリティを取り戻し、アクティブになる“健康都市”への変革が実現できるでしょう。
健康都市づくり構想
レガシー創出に参加しませんか?
2020年に向けて、オリンピックを契機とした有形・無形のレガシーをどのように創出するかが問われています。どんなかたちでもいい、興味や想いを寄せて、“スポーツの力“による都市や人へのポジティブな影響を次世代に継承していくことに関わってみては、いかがでしょう?