はじめまして。債権法を担当している浜島と申します。不動産学部に赴任してから、アメリカ大統領が3回代わり、トランプ大統領で4人目になります。ベテランとまでは言えませんが、大学生の保護者の方と同年代です。

不動産学部で教える法律

 私は法学部出身で、民法や不動産法、環境法などを教えていますが、法学部と不動産学部とでは、同じ法律でも教え方が少々異なります。より実務的というか、横断的というか、論理をきちんと押さえながらも、就職してすぐに現場で役に立つ知識を身につけてもらえるよう、工夫しています。

不動産を学ぶと頻繁に出てくる「契約」

 そこで今回は、契約について少し紹介しましょう。不動産を勉強する上で、とても重要で、そして頻繁に出てくる言葉が「契約」です。不動産のいろいろな側面で契約は重要なので、不動産学部では、債権法という授業の中で、かなりの時間を使って教育しています。卒業生がGWに尋ねて来て、「職場でお客様から『債務不履行だ』と言われたけれども、債権法の授業で習った言葉だったので、パニックにならずに済みました!」と言われ、まあ、覚えていてくれて役に立った(?!)のならよかったのかな、と思ったこともあります。

契約とは?

 契約というのは、いわば「約束」ですが、「約束」と違うのは、法的拘束力がある点です。契約を破ったら、債務不履行として裁判所に訴えられてしまう可能性があるということです。そして契約は、契約を交わした当事者の間で、効力を生じます。さらに契約の内容は、原則として当事者の間で自由に決めてよいことになっています。もちろん、違法な取引や当初から実現可能性がない内容の契約ではだめですが、それ以外は自由なので、世の中にはそれこそ実に様々な内容の契約があります。

「売買契約」を例として考える

 では、あなたがマンションの一室を買う契約をした場合を考えてみましょう。この契約を、売買契約と言います。皆さんも日常的に行っている契約です。コンビニエンスストアでペットボトルのお茶を買うのも、書店で本を買うのも、売買契約です。マンションの一室を買うのは、マンションの一室を所有する権利(区分所有権と言います)を持つ人(売主)が、買主に区分所有権を譲渡し、買主が代金を支払うという内容の契約です。

 ちなみに、マンションは不動産ですが、ペットボトルのお茶や本などは動産と呼ばれます。本の売買とマンションの一室の売買とでは、次のような違いがあります。

※ 1 新築マンションの場合
※ 2 その他、保有中には固定資産税、都市計画税、売却時には所得税、住民税などがかかる。
 他にもありますが、これだけ見てもずいぶん違いがあることが分かると思います。
売買契約以外にもある様々な「契約」
 しかも、一般に不動産は大変高額です。いわゆる「億ション」も結構売れているようですが、3,000万円〜5,000万円位の価格のマンションが一番売れています。この価格をキャッシュで払う買主も中にはいますが、代金を分割で支払う住宅ローンを利用するのが一般的と言えます。その場合、売買契約の他、銀行からお金を借りてローンで返す金銭消費貸借契約(住宅ローン契約)、担保を付けるための抵当権設定契約、保証契約など、別の契約を締結する必要が生じてきます。
ローンを組むときの「契約」
 金銭消費貸借契約は、金融機関などから借主(=買主)がお金を借りる契約です。契約の当事者は金融機関と借主(=買主)で、融資を受けられるかどうかの審査があります。審査にパスすれば、買主(=借主)はマンションの代金を売主に一括で支払うことで売買契約は終了し、あとはローンが残るわけです。最も利用されている住宅ローンはフラット35というもので、ローンの返済期間が35年間に及びます。
抵当権とは?
 25歳でフラット35を利用すると、返済終了は60歳なので、それまで無事に収入を得てローンを返し続けられるか、借主もまた金融機関も、不安要素があると言えます。そこで、物的担保として、借主が有する区分所有権に抵当権とを設定します。抵当権とは、借主がローンの支払いをしない場合に、抵当権者(通常は金融機関)が区分所有権を競売にかけて、貸したお金を回収するというものです。ローンを契約通り支払っている限り、借主はマンションを使い続けることができます。抵当権を設定するためには、抵当権設定契約が必要です。
保証契約とは?
 ところで、買った時には新築のマンションも、時が経てば通常は価値も下がります。競売にかけてもローンの残金が回収できるかやはり不安要素があります。ですから、住宅ローンの場合には、物的担保の他に、人的担保、いわゆる「保証人」や「保証会社」の保証を付けるのが通常です。保証人や保証会社に、借主の借金を保証してもらう契約を保証契約といいます。特に連帯保証人は、借主と同じ内容の債務を負うことになるので、借主に連帯保証人になるよう依頼された場合には、内容を良く吟味することが大切です。
幅広い分野の学問を不動産という切り口で学ぶ
 以上、簡単に紹介したように、不動産の売買では、それに伴う様々な契約や税金の知識も必要です。また住宅ローンの金利は日銀の金融政策等に左右されるため、経済・金融情勢にも気を配らなければなりません。さらに、マンションでは管理をうまくすることにより、価値の下落を押さえられることが分かって来ていますので、管理の知識も重要です。
 法律、経済・経営、工学のいずれの知識も、不動産に欠かすことはできません。そして、幅広い分野の学問を、不動産という切り口で学ぶことで、より広い視野を持つ、魅力的な人間に育てるよう、私たち不動産学部教員は、日々、学生と接しています。オープンキャンパスや学園祭、また不動産学部シンポジウムなど、一般の方々も参加可能なイベントを用意していますので、お越しいただければ幸いです。
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最後までご覧下さり、誠にありがとうございました。
もしよろしければ、不動産学部のホームページもぜひご覧下さい!
 
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