島﨑弁護士の「底地の気になるソコんとこ」

不動産の中でも、底地にまつわるトラブルは非常に多いです。

不動産に関する問題を多く取り扱う、半蔵門総合法律事務所の島﨑政虎弁護士に、実際に起きた事例や解決方法を紹介していただきます。

今回は、地代の変更に関する相談事例を紹介します。(リビンマガジンBiz編集部)


(画像=写真AC)

<相談例>
地主「土地を貸しています。ずっと安い賃料で貸していました。そろそろ地代を上げようと思います」

弁護士「なるほど。ただ、ご希望の地代まで上げられるかどうかは、予め検証しておく必要がありますね。…」

■地代が近くの土地と比べて安くなったら?


借地契約では現在の地代(賃料)を変更する請求ができます。

この権利を「賃料増減額請求」と呼びます。
これは、大正10年の借地法制定時に規定が新設されました。しかし、成文化される前から慣習法として認められていました。

■賃料増減額請求の要件


借地に関する賃料増減額請求の要件は以下のとおりです。

・建物所有を目的とした土地賃貸借契約の成立
・土地賃貸借契約に基づく借地人への土地の引渡
・賃料が不相当となったこと
・賃料増減額の意思表示

すなわち、これまでの賃料が不相当となった場合に、当事者は賃料の増減を請求できます。「不相当」の例として、条文では、経済事情の変動(公租公課の増減、土地の価格の変動など)や、近隣の相場の変動が挙げられています。
実際に賃料が「不相当」かどうかを判断するには「相当な賃料」を算出して比較します。相当な賃料の算定は複雑です。この点については次回詳細に解説します。

■賃料増減額請求ができなかった事例


賃料増減額請求には、「適切な賃料に今の賃料を近づける」という機能があります。

ただし、適切な賃料を定めるニーズがあるからといって必ず増減額請求が認められるわけではありません。賃料増減額請求には形式的な要件があります。

形式的要件を満たしていないために、増減額請求が否定された実例を紹介します。
1.賃料決定の当初から不相当であった場合(大判昭和17年2月27日)
2.契約当初から賃料が設定されていなかった場合(東京高裁平成15年10月29日)
3.賃借人への引き渡しが未了だった場合(最高裁平成15年10月21日)

■賃料増減額請求権の使い方


増減額を請求する当事者から、他方の当事者に対する意思表示です。通知書を用いることが一般的です。

なお、具体的な額の明示ですが、意思表示の段階では金額の明示は要らないと判断した裁判例があります。(名古屋地裁昭和58年3月14日 減額請求に関する裁判例)

次回は、相当な賃料の算定方法をご紹介します。

■まとめ


賃料が不相当となった場合、賃料の増額請求をすることができます。

ただし、「不相当」かどうか判断するには「相当な賃料」を算出する必要があります。

関連記事:
弁護士が助言する地代増額 その2
弁護士が助言する地代増額 その3

賃料増減額請求についての基本的な点については、以下のウェブサイトに詳しくまとめてあります。併せてご覧いただければ幸いです。


【賃料増減額請求(変更・改定)の基本】

https://www.mc-law.jp/fudousan/21131/

 
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