島﨑弁護士の「底地の気になるソコんとこ」

不動産の中でも、底地にまつわるトラブルは非常に多いです。

不動産に関する問題を多く取り扱う、半蔵門総合法律事務所の島﨑政虎弁護士に、実際に起きた事例や解決方法を紹介していただきます。

今回は、借地人による借地上の建物の貸し出しに関する相談事例をご紹介します。(リビンマガジンBiz編集部)

<相談例>
地主「土地を貸しています。しかし、貸した人と違う人が建物を使っているみたいなんです。こういう場合、無断で別の人に土地を貸したんですから借地契約を解除できますよね?」

弁護士「それだけでは借地契約を解除できないかもしれませんね」

今回は、借地人が別の人に建物を使わせている場合に、契約を解除できるのか?いわゆる「無断転貸」について解説します。


(画像=写真AC)

■「無断転貸」とは?


賃借人は、借りた物を賃貸人の承諾なく第三者に貸し出してはいけません(民法612条1項)。これに賃借人が違反した場合,賃貸人は原則として賃貸借契約を解除することができます(同法612条2項)。一般的に、「無断転貸」と呼ばれる行為です。

では、上記の例は「無断転貸」に当たるのでしょうか。

■借地上の建物を貸し出す行為:「無断転貸」ではない。


判例では、借地人が第三者に建物を賃貸すること自体は、無断転貸に該当せず、借地契約を解除する理由にはならないと判断されています(大審院判決昭和8年12月11日)。

これは、借地人が建物を所有したままであるため、「借地権自体を誰かに譲渡した」ということにならないためです。
つまり、先ほどの例では、建物の使用者が賃借している場合、「無断転貸」には該当しないため注意が必要です。

このほかにも、建物のみに抵当権を設定する場合についても、借地人が建物を所有していることは変わりません。この例と同様に無断転貸には該当しません。

建物自体が譲渡されて、初めて「無断転貸」に該当します。
建物が譲渡されたかどうかは、建物の登記を閲覧することで確認できます

■借地上の建物を貸し出す行為:特約で禁止することができるが…


建物の用途を借地人の自己使用に制限することや、建物の賃貸を禁止する合意を借地契約に盛り込むことは有効だと判断されています。(浦和地方裁判所昭和58年1月18日判決)

ただし、この特約に違反しただけでは、借地契約の解除は認められない可能性が高いです。解除が認められるためには、この特約に反したことに加えて、「信頼関係を破壊」しているかが重要となります。

「信頼関係の破壊」、「背信行為」については次回解説します。

■まとめ

借地上の建物を別の人が使っている、というだけでは借地契約の解除は認められません。
借地契約に建物賃貸を禁止する特約があるか、登記上、建物の所有権が移っているかなど、複数の事項を確認する必要があります。

借地上の建物の賃貸についての基本的な点については、以下のウェブサイトに詳しくまとめてあります。併せてご覧いただければ幸いです。

【借地上の建物の賃貸と借地権譲渡(否定)・建物賃貸禁止特約の効力】
https://www.mc-law.jp/fudousan/19163/

 
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