島﨑弁護士の「底地の気になるソコんとこ」

不動産の中でも、底地にまつわるトラブルは非常に多いです。

不動産に関する問題を多く取り扱う、半蔵門総合法律事務所の島﨑政虎弁護士に、実際に起きた事例や解決方法を紹介していただきます。

前回に続き、借地・底地トラブルの中から、建物買取請求を受けた場合に、建物の金額をどうやって決めるかを紹介します。(リビンマガジンBiz編集部)

前回記事:「弁護士が助言する建物買取請求への対応 その1


(画像=写真AC)

<相談例~つづき~>
地主「借地人には、『建物買取請求』という権利があることは分かりました。では実際に、私はいくらで買い取れば良いのでしょうか。」

弁護士「それはですね…」

今回は、借地人からの「建物買取請求の金額の決め方」について解説します。

「建物の時価」とは?

前回、借地人と地主の間で「売買代金額について意見が食い違うことが多い」という問題点を紹介しました。借地法の条文が、売買代金額について「時価」というあいまいな定め方しかしておらず、明確な基準がないためです。

もしここで、売買代金について合意に至らない場合、訴訟によって裁判所で代金額を決めることになります。

建物の「時価」とは、建物の価格に加えて「場所的利益」という要素を加えます。(最高裁昭和35年12月20日判決、最高裁昭和47年5月23日判決)

建物の価格は、建物を再築する費用から「耐用年数」のうち「経年分の減価相当額」を控除して定めることが多いです。(札幌高裁昭和34年4月7日判決)

通常、場所的利益は、その土地の更地価格の1割~3割程度とされることが多いです。長期間続いた借地には、多くの場合、その上に建っている建物の耐用年数も経過しているため、価格は非常に低くなっているのです。

なぜ、借地人の「実質敗訴」なのか?

前回紹介しましたが、なぜ建物買取請求は借地人にとって「実質敗訴」と呼ばれるのでしょうか。

通常、土地の賃貸借契約は、地主側が使う必要性が特に強い場合などの例外的な場合、すなわち正当事由がある場合しか終わらせることはできません。

もし地主が、正当事由なく借地人を立ち退かせたい場合、借地権価格(更地価格の5割~7割)に相当する「明渡料」を支払わなければ立ち退かせられないことが多いです。つまり地主が借地権を取り戻すことは困難なのです。

一方で、借地人が借地権を売却するには、地主の承諾又は借地非訟による承諾さえあれば可能です。

売却金額は、借地権の価格を前提に決まることが多いため、多くの場合、建物買取請求時の「時価」よりも高くなります(時価は更地価格の1割~3割程度のため)。このように、借地権とは非常に価値のある権利でなのです。

つまり、借地人からすれば、建物買取請求は借地権を換価した場合に比べて、手元に残る金額が大幅に減ってしまいます。ですから、建物買取請求権を使うことは、借地人にとっては「実質敗訴」と評価されることが多いのです。

借地人・地主双方から見た建物買取請求権の特徴をまとめます。

■借地人側にとっての建物買取請求権
・メリット:強制的に地主に買い取らせる、すなわち換価することができる。
・デメリット:金額が安い。

■地主側にとっての建物買取請求権
メリット:通常よりも安い金額で立退きを実現できる。
デメリット:借地人側の都合で行使され、拒否できない。

まとめ

建物買取請求権は借地人の権利です。

契約書で合意しても排除できず、借地人が一方的に行使できるので注意が必要です。

ただし、「建物の時価」は借地権価格よりも大幅に安いため、通常の立ち退き交渉に比べ、有利に進めることができます。

建物買取請求権が行使された場合、地主にとっては土地を格安で取り戻すチャンスといえます。専門家に依頼して、買取金額を最小限にする方向で交渉しましょう。

建物買取請求の時価の算定の基本的な点については、以下のウェブサイトに詳しくまとめてあります。併せてご覧いただければ幸いです。


【建物買取請求における代金算定方法・場所的利益の意味と相場】

https://www.mc-law.jp/fudousan/23379/

 
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