島﨑弁護士の「底地の気になるソコんとこ」
不動産の中でも、底地にまつわるトラブルは非常に多いです。
不動産に関する問題を多く取り扱う、半蔵門総合法律事務所の島﨑政虎弁護士に、実際に起きた事例や解決方法を紹介していただきます。
連載2回目の今回は、借地・底地トラブルの中から、地主さんからよくある更新料の相談事例をご紹介します。(リビンマガジンBiz編集部)
<相談例>
地主「来年、借地期間の満了を迎えます。そこで、更新料を請求しようと思います。これまでの借地人は更新料を払ってくれていたのですが、昨年借地人が死亡して、代替わりしています。今回も更新料を請求できますよね」
弁護士「契約書の記載次第ですね。契約書を確認させてください」
こういった場合、実際には更新料の支払いを強制できない場合が多いです。
その理由について、詳しく解説します。
(画像=写真AC)
更新料とは?
更新料とは、期間満了時に、借地契約の更新の対価として借地人から地主に支払われる金銭のことです。
ほとんどの場合、合意更新(※)に伴って更新料が払われます。
※合意更新:更新期間が訪れたとき当事者の合意によって契約期間を更新すること。反対に、自動的に更新することを「法定更新」という。
しかし、借地人と紛争になってしまった場合、特に借地人が代替わりしたときなどは、「理論的に更新料の支払義務があるかどうか」がトラブルに発展することが多いです。
更新料を支払う特約が必要
更新料を支払う特約(合意)がなければ支払義務はありません。
<更新料の支払義務(概要)>
a更新料を支払う特約がない場合
→借地人に、更新料の支払義務はない
ただし、借地人が任意に支払うことは適法(有効)である
b更新料を支払う特約がある場合
・合意更新の場合、特約は有効となる。
・法定更新の場合、更新料支払義務が否定される傾向がある
→ただし、合意の内容(文言)によっては肯定される可能性もある
上記にあるように、法定更新の場合は特約があるにも関わらず、更新料の支払義務が発生しない場合があるのです。次項では、法定更新の更新料についての裁判例をご紹介します。
法定更新と更新料
法定更新の場合は、借地契約の期間が満了しても、地主側の使用の必要性などの正当な理由がない限り、原則として借地契約は自動的に更新されます。
こういった場合、地主が更新料を請求できるかは多くの訴訟で争われています。
実際には、請求できないという判断が多いようです。
合意した更新料にもかかわらず、借地人が支払わないことについて、法定更新には影響がないとした裁判例が複数あります。
※東京高裁昭和45年12月18日
※東京地裁昭和59年6月7日
※東京地裁昭和51年9月14日
少し違った判断ですが、法定更新における更新料の特約の適用についての裁判例もあります。(※東京高裁平成11年6月28日)
この判断方法は、更新料の特約の内容(文言)を、どう解釈するかというものです。
この事案では、特約の文言が『合意更新』だけを想定しているように読めるものでした。そこで、裁判所は「法定更新には更新料の支払義務は適用されない」と判断しました。
しかし、この裁判の判断から、逆もまたあり得ると考えられます。
特約の内容が『法定更新も含める』ものであれば、「法定更新でも更新料支払義務がある」ということです。
未だかつてこのような解釈は示されたことはありません。
しかし、どのような契約であっても「法定更新には更新料合意は適用されない」とは示していないのです。
例えば法定更新にも対応する場合、以下のような文言で定めることが考えられます。
<文言例>
「賃借人が更新を希望する場合で、賃貸人・賃借人双方から特に申し出がない場合は自動で更新される。その際、賃借人は○○の更新料を賃貸人に支払う」
(画像=写真AC)
まとめ
更新料は「当然に請求できる」性質のものではないので注意が必要です。契約書の中で更新料について定めましょう。また定め方によって、更新料に関する判断は大きく変わりうることにも注意が必要です。
まずは、既存の借地契約書に更新料の定めがあるかを確認しましょう。
その上で、借地人に提示する更新契約書の内容は、弁護士に相談し、最適なものとしましょう。
借地に関する更新料の詳細については、以下のウェブサイトに詳しくまとめてあります。併せてご覧いただければ幸いです。
【借地の更新料の基本(更新料の意味と支払の実情)】
https://www.mc-law.jp/fudousan/650/
【更新料特約の法定更新への適用(更新料支払義務)の有無】
https://www.mc-law.jp/fudousan/25771/