先日、相続財産に含まれていた不動産を売り、その代金を相続人で分け合う代償分割を行うという遺産分割協議書を持った方が相談に来られ ました。  登記を長男の単独名義としたものの、予定していた価格で売ることができなかったために、もめごとになってしまったようです。

  そもそも、この土地の固定資産税評価額は2000万円でした。

  そこで、相続人はみな、 最低でもその金額以上で売れるだろうと皮算用していたのです。

    しかし、土地には、相続した時点で誰も気づかなかった大きな問題が隠れていました。すなわち、土地は道路に2メートル以上接しておらず、建築基準法上の接道義務を満たしていなかったのです。接道義務を満たしていない土地には建物を新たに建てられません。

  なぜなら、2メートルにも満たない道路では、たとえば災害時の避難経路の確保や、消防車や救急車などの緊急車両が接近する経路を確保が難しいからです。 当然、そのような土地の市場価値は低く見積もられます。2000万円で売れるなど、とても期待できないことが明らかになったわけです。 このように不動産を対象として遺産分割を行う場合には、遺産分割協議時には想定していなかった問題が見つかることが多々あります。 接道義務以外の例としては、水道関連のトラブルも要注意です。たとえば、相続した土地に引かれている水道管が私有地の下を通っているような場合、その私有地の所有者から工事の承諾を得られないために、水道管が老朽化しても交換できなくなることがあります。仮にこうしたリスクのある土地を、遺産分割の結果、取得してしまったら大変です。 「この土地には問題があったから、分割は無効だ」と主張しても、遺産分割はそう簡単にやり直すことはできません。相続人全員が合意しなければ、まず無理であると思っていたほうがよいでしょう。したがって、遺産分割の対象となった不動産に問題が発覚した結果、トラブルとなるのを避けたいのであれば、事前に十分な対策をとっておくことです。具体的には、遺産分割協議書の中に、万が一想定していなかったような事態が生じた場合に、どのように対処をするのかについても記載しておくべきです。 また、遺産分割の結果、自分がよく知らない遠隔地にある不動産を譲り受けることになるような場合には、協議書に合意する前に、現地の不動産業者に依頼するなどして、その不動産に問題がないか、用心深く調査しておくことも望ましいでしょう。

 
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