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 金融機関が住宅ローンを貸す場合、通常、債務者は、団体信用生命保険(団信)に加入させられます。 債務者が死亡した場合に、この団信から生命保険金が支払われ、それによって住宅ローンが完済される形となっているわけです。

 金融機関の立場からすれば、ローン債権をスムーズに回収することを可能にする仕組みといえるでしょう。 この団信の保険料を支払っているのはローンの貸し手である金融機関であり、一般の生命保険などのように毎月、預金口座から引き落とされるというわけではないために、その存在を意識する機会はほとんどありません。 そのため、団信に入っているという事実は忘れられがちであり、前述のように、住宅ローンを支払ってきた親や配偶者などが死亡したときに、団信でローンが完済されたことを伝えられて、はじめてその存在を思い出すなどということは、決して珍しいことではありません。 いずれにせよ、団信のおかげで、相続人は思いもかけない資産を得ることになります。 たとえば、被相続人が購入したマンションにまだローンが5000万円残っていたと思っていたのに、それがゼロになるということは、いわば突然、5000万円の資産がまるまる目の前に現れたようなものなのですから。 しかし、好事魔多しではありませんが、相続トラブルは、このような場合に発生すること が非常に多いのです。 被相続人にはさしたる資産がないと思い、それまでは相続財産に全く無関心だった遠い親族の中から、「その不動産には、自分も権利を持っているはずだ!」と声高に要求してくる者が現れるかもしれません。 また、見ず知らずの第三者が、「自分は相続人にお金を貸していた。その不動産を売って借金を返済してもらいたい」などと詰め寄ってくることもあります。 当然のことながら、被相続人はこのような事態が起こることなど全く予期していなかったのですから、何の対策もとられていません。 相続人は「ノーガード状態」で、ハイエナのように不動産を狙う者たちを相手に、厄介なやりとりを強いられることになるのです。 その対応を誤れば、せっかくローンのないまま手に入れた不動産を失うことにもなりかねません。 本来、団信は一家の大黒柱がなくなったときに、不動産という大きな資産を遺族に残す非常に大事な役割を果たすもののはずです。

 それが逆に、遺族にトラブルをもたらすことになるのは、何とも悲しい皮肉というほかありません。

 現在の住宅ローンの契約を確認し、万が一、亡くなった場合、団信により、どれくらいの資産が残るかを確認の上、相続対策をすること

を忘れないようにしてください。

 
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