先日、相談者の息子が、ガンで死亡したのだけど、相談者は現在、息子の購入したマンションに住んでおり、このマンションの登記名義は息子さんのままになっているのだが、息子の前妻からでマンションを明け渡してほしいと言われたのだけど、どうしたら良いかという相談を受けた。
息子は20年前に結婚していたが、10年前に離婚し、前妻と息子との間には18歳になる娘がおり、前妻は、再婚し、娘と一緒に現在の夫と住んでおり、その娘は息子の唯一の相続人という状況である。 そこで、マンションの所有権は娘にあるとして、娘の法定代理人である前妻から相談者に対して明け渡し請求がなされたのである。 マンションについて相続権を持つ被相続人の娘(自身の孫)から明け渡し請求をされている以上、相談者はそこを明け渡さざるを得ない状況である。 ただ、実は、このような状況になることを懸念して、息子は生前に、マンションを相談者に遺贈する旨を記した自筆証書遺言の作成を試みていた。 しかし、すでに容体が深刻化していた段階だったために、途中まで綴るのが精一杯で、最後まで書き終えることができなかったのである(ワープロなどを用いれば完成できた可能性はあったが、自筆証書遺言はあくまでも「自筆」であることが求められている)。 息子の病状が悪化する前、まだ十分な気力、体力が残っていたときに、相談者が、それとなく遺言書の作成を促していればよかっただが、そのようなわが子の死を予期して遺言書を書いてくれとは言えなかったのである。 このケースの場合、自筆証書遺言ではなく、公正証書遺言であれば、病室に公証人を呼び寄せて、遺言書を作成させることができた。このように、自筆証書遺言が難しいときでも、公正証書遺言であれば作成が可能となりうることを頭に入れておいてほしい。