『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』(2014・ニュージーランド)
監督:ジェマイン・クレメント、タイカ・ワイティティ
脚本:ジェマイン・クレメント、タイカ・ワイティティ
出演:ジェマイン・クレメント、タイカ・ワイティティ、ジョナサン・ブラフ、コリ・ゴンザレス=マクエル、他
(画像=Pixabay)
『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』は、ニュージーランドのウェリントンを舞台にしたホラーコメディだ。シェアハウスで共同生活を送るヴァンパイアたちをドキュメンタリー風に描いている。
379歳のヴィアゴはひょうきん者だが少し神経質、183歳のディーコンは血気盛んな若者(見た目はおじさんなのだが)、そのディーコンをヴァンパイアにしたのは8000歳のピーターだ。
ヴァンパイアと言えば、古城の祭壇にある棺桶をねぐらにして、夜な夜な美女の首筋に歯を立てる―あのドラキュラをイメージする。そのモデルになったのは、15世紀のルーマニアで、残虐の限りを尽くしたヴラド公であることは有名な話だ。そのヴラドも一緒に住んでいる。862歳だ。
ある日ピーターが、屋敷に招いた大学生のニックをヴァンパイアにしてしまう。新たな仲間として迎えられたニックだったが、周囲に自分がヴァンパイアであることを吹聴するなど、ヴァンパイアたちが定めたルールを次々に破ってしまう。ついには、大親友である人間のスチューを、勝手に屋敷に招いてしまうのだった――。
ヴァンパイアたちは夜な夜な楽器を演奏したり、踊ったり、たまに街へ繰り出して遊び歩く。街では獲物となる人間を誘い出したり、オオカミ男たちをからかったり、自由気ままだ。
一方で、屋敷の中では共同生活の秩序を守ろうとする。5年も食器を洗っていないディーコンと、それを注意するヴィアゴのやりとりは、普通のシェアハウスで交わされる会話のようである。
ある女性が、ヴァンパイアの使い魔になって日々の雑事などをこなしている。目的は、自分もヴァンパイアにしてもらうためだ。
「あの契約の話しない…?」
と、女性がいつヴァンパイアにしてくれるのかをディーコンに切り出すシーンがある。
「もう4年半も鉢植えの世話や、クリーニングや皿洗いや…」
と、どれほど彼らに尽くしてきたを語りだすのだ。
ディーコンは彼女を(催眠術をつかって)やんわりといなす。
まるで長く付き合っている彼女が、彼氏にいつ結婚できるのかを切り出し、それを彼氏が煙に巻くような調子だ。
ニックが連れてきた人間のスチューによって、インターネットや携帯電話といった文明の利器が手に入り、彼らの生活は充実していく。YouTubeで日の出の動画をみんなで見たり、好きな女性の写真をプリントアウトして棺桶に貼ったり、処女のエロ画像を探したりと、いい歳した(なにせ100歳越えばかりだ!)おっさんたちがワイワイ盛り上がる。
仲の良すぎる男同士の関係を「ブロマンス」というが、まさにそれだ。
ついには「あいつらホモじゃないの?」と、使い魔の女性にも呆れられる。
男なら誰しも身に覚えがあるシーンではないだろうか。
その他にもモンスターが登場する。
いつも集団で行動し、暑苦しいノリが体育会系のようなオオカミ男や、舞踏会に来てもテンションの低いゾンビなどにもどこか人間っぽさがある。
思えば、ウザい体育会系や、結婚を迫る彼女、飲み会でもテンションの低い人など、普段から我々の周りにいる人たちと変わらない。ヴァンパイアが一人では生きていけないように、人間もまた一人では生きていけない。おどろおどろしいモンスターのイメージとは裏腹に、彼らの生活はとても楽しそうだ。
そこかしこに盛り込まれている、ヴァンパイアあるある(?)のようなオフビートなギャグに終始笑ってしまう。「ヴァンパイアは鏡に映らないためファッションが決まらない」「ヴァンパイアは銀が苦手で、初恋の人からもらった銀製のペンダントでやけどをしてしまう」といったシーンは悲しくも可笑しなコントに仕上がっている。
シェアハウスを探してみようかなあ。
まさかヴァンパイアはいないだろうが。