禪フォトギャラリー (撮影=リビンマガジン編集部)
六本木ヒルズの近く、平日のこの日も若い女性たちや、いったい何の仕事をしているのかわからない裕福そうな青年が、ウインドウショッピングやお茶なぞを楽しんでいた。
金と欲望が集まるこの街で、その雰囲気とは似つかわしくない展覧会が開かれている。
「ドヤ街」展だ。
地方からの移住者や、肉体労働者たちが集まり暮らす東京の山谷、横浜の寿町、そして大阪の釜ヶ崎といったドヤ街にフォーカスした、写真家の橋本照嵩、梁丞佑、井上青龍、星玄人、須田一政たちの作品が紹介されている。
星玄人の作品「大阪 西成」は、中央に犬を抱えた男、右には自転車にまたがりバランスをとる男、左奥には立ち飲み屋で酒を飲む男たちがおさめられており、皆それぞれが異なった表情を浮かべている。西成のドヤ街での生活の一コマだ。
星玄人「大阪 西成」
梁丞佑「人」は、横浜の寿町で2人の男性を撮影した作品だ。
タオルを頭からかぶり口元を隠して腕組みをする男と、サングラスをかけた男がこちらをにらんでいる。二人ともフリースのような服を着ていることから季節は冬だろうか。
梁丞佑「人」
このイベントを主催した禪フォトギャラリー代表マーク・ピアソン氏は「ドヤ街は特別な場所だ。ドヤ街は私たちの本性と根源を表している。それは、仮面がはがされ、持ち物とお金を無くし、権力を奪われた私たちそのものだ。」と語っている。
「ダークツーリズム」という言葉が一般メディアなどで取り上げられている。災害被災跡地や、人類の死や悲しみを対象にした観光を指したものだ。この展覧会を見てドヤ街に行くことは決してダークツーリズムではない、と感じた。
我々は都市に住む生活者である。それはドヤ街に住む生活者と根源的な部分で何も変わらない。写真からこちらを見つめる人々の目には皆生きる力がみなぎっていた。
橋本照嵩「山谷」
須田一政「走馬灯のように 釜ヶ崎 2000・2014」
井上青龍「釜ヶ崎」
【イベント情報】
「ドヤ街」展
会場:
禪フォトギャラリー
場所:
東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル2F
開催期間:
2017年7月22日 ~ 8月17日
開館時間:
12:00~19:00
月曜・日曜・祝祭日休館
観覧料:
無料