8月28日、不動産テック協会による「不動産テックカオスマップ第10版」が公開され、都内で発表イベントが開催された。不動産テック協会の代表理事の巻口成憲氏が最新版マップを解説し、NTTデータ経営研究所の川戸温志氏が講演を行った後、パネルディスカッションが行われた。

不動産テックカオスマップ(第10版)

「不動産テックカオスマップ(第10版)」※クリックで拡大 画像=不動産テック協会

「不動産テックカオスマップ第10版」には新カテゴリーが追加されるなどの変更が加わり、全体で499のサービスが掲載され、前回(第9版の463)から36増加した。

カオスマップの編集方針や今回の変更点は以下の通りだ。

  • サービス内容の変化により該当しなくなったものの削除
  • 1年間運用されていないものの削除
  • メディアのみのサイトの削除
  • 集客、送客サイト、自社物件サイトの削除
  • 「物件情報メディア」カテゴリーと「不動産情報」カテゴリーを統合して新しく「不動産データベース」カテゴリーに
  • 「リノベーション」カテゴリーが削除され、一部のサービスがマッチングカテゴリーに移行
  • サービス増加に伴い「不動産クラウドファンディング」カテゴリーは、「不動産クラウドファンディングカオスマップ」を公開
「不動産クラウドファンディングカオスマップ(第10版)」

「不動産クラウドファンディングカオスマップ(第10版)」※クリックで拡大 画像=不動産テック協会

カテゴリー別では、「不動産クラウドファンディング」が81サービスと前回の69サービスから増加。「業務支援」サービスも増加した。一方、「VR・AR」「スペースシェアリング」「価格可視化・査定」といったカテゴリーは減少した。

巻口氏は「全体的に不動産テック市場が成熟し、安定期に入ったという印象。新たなビジネスモデルが生まれにくくなっているが、既存サービスの連携によるプラットフォーム化が今後の差別化ポイントになるだろう」と分析する。

NTTデータ経営研究所・川戸温志氏

NTTデータ経営研究所・川戸温志氏 撮影=編集部

続いて登壇したNTTデータ経営研究所の川戸氏は、「生成AIと不動産ビジネスの行方」と題し、世界の不動産テック市場の動向について解説。「世界的に不動産テックマーケットの盛り上がりは継続している。特にAI関連サービスが注目されており、全体の26%を占めている」と述べた。

また、日本の不動産テック市場について「アメリカに10年遅れてオペレーションサービスが充実してきた。今後はAIやデータ分析サービスが増えていくだろう」と予測。一方で「日本企業はデータの整備や活用がまだ不十分。社内外のデータ連携にも課題がある」と課題も指摘する。

パネルディスカッションでは、不動産テック協会の代表理事の滝沢潔氏と同じく同理事の浅海剛氏も加わり、業界の現状と課題について議論が交わされた。

滝沢氏は不動産クラウドファンディングの急増について「新規参入が相次ぐ一方で、土地転売目的での利用など、健全性を欠く案件も増えている」と懸念を示した。

データ活用については、浅海氏が「不動産業界のデータと他業界のデータを掛け合わせることで新たな価値が生まれる可能性がある」と指摘。一方で川戸氏は「多くの企業で社内のデータ整備自体が進んでおらず、外部データとの連携はさらにハードルが高い」と現状を分析した。

行政の取り組みについては、国土交通省による不動産IDの導入や不動産情報ライブラリの整備など、前向きな動きが評価される一方で、3Dモデリングなどデジタル化への予算配分が諸外国に比べて少ないとの指摘もあった。

今後の展望について、浅海氏は「新規サービスの増加と既存サービスの利用企業拡大が続く」と予測。滝沢氏は「業務支援系サービスの普及が進む一方で、地方では内見予約システムのように文化の違いで普及が遅れる分野もある」と述べた。川戸氏は「純粋な不動産領域以外の、コンストラクテックやセキュリティ関連など周辺領域のサービスが増加している」と分析した。

進行を務めた巻口氏は「不動産テック市場は今後も成長が続くが、企業の差別化やサービスの有用性の理解促進が課題となる」とまとめ、不動産テック市場が成熟していくなかでの新たな課題について意見が述べられた。

撮影=編集部

 
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