元  国税局職員  くらたです。

好きな女性の方タイプは『ちゃんと領収証をもらう人です。





前回、マイホームの売却関連の特例

を、紹介しました。



愛すべき読者の中には、売却前に、賃貸をして不動産所得を得る方もいるかもしれません。

今回は、

不動産の賃貸を行う法人に税務調査が入ったときの話を(役に立つかどうかは別にして)。

むかしむかしあるところに

マンション一棟を所有し、各部屋を住居用に賃貸して

収入を得ている家族がいました。



家族の中の一番の稼ぎ頭は、70歳の社長です。


社長は、帳簿上、家族を従業員にしていました。

従業員の中には、社長のお母さんもいます。

70歳の社長のお母さんですから、“おばあさん”です。


ばあさんを従業員にしていると言っても、それはあくまで帳簿上のこと。

税法は実質主義です。

不審に思った国税局の調査官は、おばあさんから直接、話を聞くことにしました。

「こんにちは、お母さん」

「はい?」


「こんにちはー!!おかあさぁぁん!」

「はいはい。朝ごはんは食べましたよ」


おばあさんとは、あんまり話ができません。

でも、調査官は質問を続けます。


「どんな仕事をしてますか?」

「はい?」


「おーしーごーと!」

「してませんよ〜」

調査官の思った通りの回答です。おばあさんは、仕事をしていないと言うのです。


「毎月、お給料をもらってますよねー?」

「はい?」


「おーかーねっ!もらってますよねー?」

「もらってませんよ〜」


「30万円もらってるはずなんですけどー!」

「知りません〜」 



おばあさんは、給料ももらってない、と言います。

そこまで聞いて、調査官は社長を問い詰めました。



社長ー!お母さんはこう言ってます!どう言うことですか?」

「まあ、聞きなさい。お若い調査官よ。不動産賃貸というのは、24時間、不動産の管理をしてるんだ。うちは、管理会社もいないから、賃借人から毎日のように連絡が来る。わし一人では対応できんから、母親にも仕事を任せているんじゃ。そういうことはよくあるんじゃ」



社長は、しらを切るつもりのようです。


「本人は、やってない、と言ってますよ!!」

「本人は、そういうつもりかもしれんが、電話に出たり、掃除をするのも立派な仕事なんじゃよ」

社長は、嘘を重ねます。




「お給料の件はどうですか?もらっていない、とはっきり言いました」

「それは、金を渡しても、本人は使ったりできないから、わしが預かっとる。親子なんだから、当然のことじゃろ。ふぉっふぉっふぉ」

完全になめられています。集めた情報と勢いで、一気に社長を追い込みます。




「それでは、従業員に賃金を払っていると認められません。勤務の実態もありませんし、本人の自覚もなく、金銭の受け渡しもない。それを聞いて、だれが納得するんでしょうか。お天道様とお月様が許しても、ぼくが許しません。否認します」


そういうと、社長は

「ひえ〜、おたすけ〜」と言って、一目散で逃げてゆきました。




おばあさんへの給与を否認された社長は、5年分で300万円の法人税と100万円の所得税、他にも延滞税と重加算税を払うことになりました。



めでたし  めでたし

法人が、節税目的で家族を従業員にすることはよくあります。しかし、勤務実態がないと、帳簿上で従業員にしても簡単に否認されてしまいます。

否認とは、法人が帳簿上で行った処理を国税局が認めないこと。 


登記して、役員にすれば、このようなことは起こらなかったかもしれません。

従業員と違い、役員には常勤が求められないからです。

役員報酬にはルールがたくさんありますが、きちんと把握すれば、きっと読者の味方になってくれます。

事業を始める際には、費用を払って、専門家に意見を求めましょう。

ただいま、キャンペーン中でして、右上の『いいね』を押していただいたり、記事をFacebook等でシェアしていただくと、官公庁から来る封筒の表面が、テカります。

免責

記事の内容は投稿時点での税法、会計基準、会社法その他の法令に基づいています。また、読者が理解しやすいように、言い回しや用語を変更しています。記事に基づく情報を使って実務を行う場合は、専門家に相談するか、関係法令をお調べください。本情報の利用により損害が発生することがあっても、一切責任を負いかねます。 

 
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