今年の第99回全国高校野球選手権大会は、埼玉県代表の花咲徳栄（はなさきとくはる）高校が優勝し、埼玉県勢初の栄冠を手にした。埼玉県は市部が日本で一番多く、そのため地域によって様々な特徴がある県だ。埼玉県の住宅事情について、埼玉県の不動産会社に勤務していた経歴を持つ株式会社FP-MYS 工藤崇代表に解説してもらった。（リビンマガジンBiz編集部）
大宮の街並み （画像＝写真AC）
埼玉県は野球が盛んな地です。パリーグ西武ライオンズの本拠地（所沢市）が代表的ですが、夏の甲子園の埼玉県地方大会にも162校の高校が参加しました。これは全国6番目の多さです。筆者はFP仲間と定期的に大宮郊外の野球場で草野球を楽しんでいますが、週末ともなれば朝からたくさんのグラウンドが盛り上がっています。
今回は花咲徳栄優勝記念として、埼玉の不動産事情をご紹介します。
4年前、筆者は川口市の不動産会社・建設会社に営業職で勤務していたことがあります。そのときの知識をもとに考察すると、埼玉の街づくりは「江戸時代の街道」をもとに発展してきたことがわかります。
中山道と川越街道
江戸時代には、諸大名は定期的に領地と江戸を行き来する「参勤交代」がありました。そのため広い街道が整備され、商業や流通が発展していきました。現在の街の発展にも大きく影響しています。この街道がいまどうなっているのか、どのような街が形成されてきたのかを、特徴とともに見ていきましょう。
中山道…さいたま市（大宮・浦和）・川口市・熊谷市・深谷市など
埼玉県のほぼ中心を南北に走る中山道（県内では国道17号）は、その上を走る首都高大宮線とともに、埼玉県の大動脈として活躍しています。行政や大型商業施設の中心は県東部の京浜東北線、および新幹線沿いに移っているものの、国道沿いは敷地の広い店舗で栄えています。道の西側には荒川が流れており、住宅環境（特に分譲戸建の適地）の良さも魅力です。埼玉県のなかでも、土地の価格や賃貸物件の家賃の高さは高水準の地域といえるでしょう。
川越街道…和光市、新座市、川越市など
中山道に沿って伸びる荒川の、更に西部を並行して走る川越街道は、現在の国道254号線です。中山道沿よりもベッドタウンのイメージが強くあります。終点の川越は「小江戸」と呼ばれ、歴史のある街です。東京の池袋から東武東上線が南北に走るため、東京都内へのアクセスも快適です。埼玉の電車と言えば東京に出るJR（埼京線）があげられ、通勤ラッシュの代名詞ともいわれます。そちらに比べ、東武東上線は比較的（それでも混雑していますが）余裕のある通勤生活を送ることができるでしょう。
川越の小江戸 （画像＝写真AC）
東部
埼玉県東部も独自の発展を遂げています。国道4号線沿いがまるで中山道のように発展しています。また、埼玉高速鉄道周辺が住宅適地として発展しています。高速鉄道は東京都内において南北線と直通しており、都心へのアクセスも抜群です。「草加せんべい」で知られる草加市も全国的に有名ですね。
国道4号線は県北東部の「栗橋」で西部に向かって伸び、中山道と合流します。このあたりは農業地域として昔ながらの雰囲気を残すとともに、大規模な工場用地でもあります。都市化・工場化も後発地域でありながら、大宮寄りの「越谷レイクタウン」ではどのような買い物も揃う充実した店舗群が栄えています。レジャー施設として１日いても飽きないほどです。
なお、この東部から中山道へ合流する「加須（かぞ）市」の花崎地区にある高校が花咲徳栄高校です。埼玉県民はもちろん、特に北部の方は「おらが街のチーム」として喜びもひとしおではないでしょうか。
そのほかの地域
もちろん、埼玉県はそのほかにも様々な顔を持つ県です。東京都内へのアクセスの良さから県全体が住宅地として発展しているほか、今回取り上げたような大きな道路から買い物環境も抜群です。大宮や浦和はターミナル駅としての存在感も際立っており、日常生活のほとんどの買い物は都心に出ることなく済みます。
都心で仕事をし、終わると埼玉県内の自宅に戻る生活もおすすめできます。不動産価格を見ると、都心に家を買う（借りる）よりも安く家計に優しいです。
これからの埼玉の住宅事情
2017年現在、約730万人が居住する埼玉県は、これからも人口が増加傾向にあります。今後も居住地としての存在感は維持されていくことでしょう。場所によっては都心に出るまで時間がかかりますが、駐車場（場所によっては2台確保できている物件も数多くあります）があるため車と公共機関を併せて活用すると通勤時間を短縮することができます。
最後に甲子園の話に戻りますが、来年2018年はいよいよ夏の甲子園が100回記念大会です。埼玉県は通常代表校１校ですが、来年は2校（南北と予定されているようです）が出場します。ふたたび埼玉県勢が甲子園で旋風を起こしてくれる可能性が高い、ということがいえます。期待しましょう！
