7月5日、野村総合研究所は、国内100都市を対象に成長可能性ランキング発表した。
実績と将来性を踏まえた総合ランキング1位は東京23区だった。一方で、実績と将来性の差分、つまり伸びしろが多いポテンシャルランキング1位は福岡だ。なぜ福岡は今後も成長するのか、FP-MYS 工藤崇代表に聞いた。(リビンマガジンBiz編集部)


博多駅 (画像=写真AC)

ポテンシャルランキング1位は福岡市でした。今回は将来有望な九州の看板都市について様々な見地から分析してみましょう。

福岡は日本を代表するイノベーション拠点になる?

筆者は家族が長崎出身のため、実家帰省を兼ねて福岡市を訪れることがあります。現在も、妻の弟が居住しています。

福岡は、那珂川を挟んで、商人の街である「博多」と、古くは福岡城、現在は市役所という行政の中心地から発展した「天神」という、近い距離ながらも雰囲気の異なる2つの街が混ざり、文化を醸成しています。

実際に私が感じた福岡の印象は、玄界灘に向かって拡がる街の形や、中心地から空港が近く「九州の玄関口」という言葉通り、利便性の良い街というものでした。

今、福岡は新たな産業、いわば「イノベーション」を生み出そうとしています。過去にも、日本を代表する起業家である孫正義社長が幼少期を過ごしているほか、堀江貴文さん、家入一真さんといったネットベンチャー企業の創業者を数多く輩出しています。

彼らの後を追うように、福岡はスタートアップベンチャー企業の出発地点として、大きな注目を浴びています。行政によって旧小学校跡地に官民共同のベンチャー企業のスタートアップ支援施設を設置したほか、2017年にICC(INDUSTRY CO-CREATION)などのスタートアップコンテストが立て続けに福岡で開催されました。また、金融機関の動きも注目されています。

なぜ福岡はここまで注目されているのでしょうか。


福岡が注目される理由

まず、オフィスの賃料が東京と比べて割安であることが、注目される理由の1つでしょう。ビルディング企画が発表した2017年6月度のオフィスビル市況調査の結果によると、東京都主要5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)の1坪当たりの推定平均成約賃料は、1万9,304円でした。一方で、福岡エリアは1坪当たり9,926円で、東京の賃料の2分の1以下です。

また、福岡の歴史にも注目される理由があるのではないでしょうか。
福岡は古来、大宰府として西日本における行政の中心地でした。平安時代に平家の治世となると、大宰府から福岡へ経済の中心が移動しました。江戸時代に黒田氏が福岡藩を誕生させた一方、博多は商人の町として存在感を高めます。そうなることで、福岡市にある玄界灘も対東アジア外交の中心地として成長しました。現在はこの二大都市に加えて福岡空港や九州大学を持つ吉塚駅エリアが組み合わさり、一つの巨大都市を形成しています。

筆者はここに街が発展する「地理的な要因」が隠れていると考えます。江戸時代は藩政と商人街が別々に形成されていましたが、近代になり横断的な鉄道が開通しました。これにより双方向の交流が活発になったと考えられます。また、福岡空港が街の中に設置されたことにより空路も整備されました。陸路としても、本州から九州に入る新幹線や高速道路といった大動脈が通っています。こういった地理的な優位性により、様々な影響力が玄界灘を中心に集まったことで、現在の福岡の活力が生み出されているのではないでしょうか。


渡辺通り (画像=写真AC)

福岡「発」の産業に期待

このような点から、福岡は今後も成長していくと考えられます。投資ファンドの「F Ventures」は、福岡を中心に様々な企業に投資をしており、東京でも今後社名を聞く成長株が増えていきそうです。また、福岡はソウルや北京、上海といったアジア大都市から近いという特徴があり、国内においても東京のみならず大阪にもアクセスが良いという地理的優位性があります。こういった理由から、国内企業においても、先述したオフィス賃料の安さも相まって、サブオフィスを置くなら福岡という風潮が高まっています。

また、福岡の不動産業界の今後にも注目です。日本の人口が減少傾向になるなか、福岡市は将来人口も160万人前後を維持できると予測されています(「福岡市将来人口推計」より)。九州の中心地であり、九州大学をはじめとした教育機関も集中している福岡は、今後も人口規模が維持できる可能性が高いのです。今後の日本は、東京や大阪などの大都市を除き、県庁所在地のような中核都市も人口も減少していくと考えられています。それにともなった賃貸マンションやオフィスビル需要の減少という問題が次第に顕在化していくと思われますが、福岡は比較的、今後も安定した推移が見込めるでしょう。

 
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